15's COOKIE-1
和泉 日菜、15歳、独身。
数メートル先をコノと哲希君が手を繋いでラブラブしながら歩いている。
日菜たちは訳あって足が棒、いやいや、足が鉄棒、いやもっともっと!体中がダイヤモンド!!…意味不明になっちゃった。とにかく、疲れ切って歩くのもやっとな状態なんですよ。だから、コノは哲希君に寄り添って歩いている。
羨ましい…。そんでもって日菜は…。
チラッと隣を盗み見る。ちょっと離れて、伸が日菜に合わせてゆっくり歩いていた。
シン。住谷 伸。日菜の好きな人…。何で好きになったのかは、わからない。伸は日菜を好きらしいって噂を聞いて、それで意識し始めて、目で追うようになって、今まで気付かなかった伸をたくさん知って…もっと近くに行きたいって思って…。これって『好き』ってことでしょ?だけど、バレンタインもあげなかった。誕生日プレゼントもあげなかった。コノたちみたく、元々親しかった訳でもない。ましてや、誰かに「伸が好き」なんて話したこともなかった。
でもね、今日、コノに話して日菜は思ったの。「はっきりしなきゃ」って…。
日菜は意を決して、伸の方に向き直った。
「…日菜のこと好きでしょ?」
日菜流はっきりのさせ方、直球勝負でハッキリ言う!
「…えっ!?」
伸は勢いよく日菜を振り向くと、だるまさんが転んだをした時みたく、歩いてる態勢のまま止まった。格好がおもしろくて笑いそうになったけど、日菜は容赦なく続ける。
「伸は、日菜のこと好きなんでしょ。だから、今日あんな作戦まで立てて、お弁当一緒食べようとしたんでしょ?」
「…え?…いや、その…えっと…」
伸の目が泳ぐ。体育着のポケットに片手を突っ込んで、もう片方の手で髪を忙しなくいじっている。明らかに戸惑っているのが手に取るようにわかった。
「あの…その…え〜?あのさぁ…えっとさ…」
「…違うの?」
伸は髪をいじっていた方の手で、頭を掻き出した。さっきより顔が赤くなっている。図星なんだ。
「う〜…ん、まぁ…ね。そんなとこ」
そう言うと、伸は頭を掻いたまんま進んでいってしまった。その間、伸は日菜のこと一回も見てくれなかった。日菜はハッキリさせたいのに、そうやって適当に誤魔化されると不安になってしまう。
「…もう疲れた」
日菜は遠くなる背中に呟いた。そして、膝を抱えてしゃがみ込む。
「日菜は真剣なのに、なんで伸は聞き流しちゃうの?今のままじゃ嫌だから、勇気出したのに…何でちゃんと答えてくれないの?そんなんじゃ何も変わらないじゃん…はっきりさせないと意味ないじゃん。日菜の気持ちはまだ半生状態で…ちゃんとケジメ付けたいの…」
一度口を開いたら、どんどん想いが溢れて止まらなくなった。今まで言えずにいたことも、今感じたことも全て…。