閉ざされた扉の向こう側へ-1
紗理奈に導かれ、雅和は廊下の突き当りにある階段の前まで来た。
「地下室?」
「ええ。真奈美ちゃんはいつもこの下のお部屋で敏明を治療してくれているの。
今日はそのお部屋がパーティー会場。」
雅和は気のせいか、紗理奈との距離感が一気に消えてきたように思えた。
「紗理奈。なんか、雰囲気が変わったね。」
「わかる?わたし、もしかしたらおじ様のこと、本当に好きになっちゃったみたい。」
そう言うと紗理奈は雅和に抱き付き、胸を摺り寄せてきた。
雅和の股間がすぐさま反応したのに気付いた紗理奈がいきなりしゃがみこんだ。
「やだ〜。おじ様ったら、あんなにたっぷり出した後なのに。
もうこんなに反応してるのね、うれしいわ。」
そう言うと、雅和のペニスの先端を口に含み、数回吸った。
突然の愛撫に雅和のペニスはますます硬度を増していった。
そもそも他人の家に招かれて、家の中を全裸のままで案内されるなど、
常識で考えればあり得ないことだった。
そしてその家の娘に全裸で歓待される。
いや、その娘とはすでに身体を合わせ、何度も絶頂を迎え合ったのだ。
そして今、妻や娘の待つパーティー会場へと案内されている。
妻の香澄と一緒にこの家についてから、すでに2時間近くたっている。
香澄は着いて間もなく、敏明の母麗子に、準備があるからと連れ出されてそのままだ。
2時間もの時間をかけて一体何の準備をしているのだというのだろう。
その答えも、この扉の向こう側にあるはずだった。
全てが雅和の日常とは大きくかけ離れており、
その全てが世間の常識の全く通用しないものだった。
今まさに、自分はその非日常、非常識の世界の真っただ中に置かれているのだ。
おそらくは妻の香澄も、娘の真奈美も、
もうすでにこの非日常の世界にどっぷりとつかっているのではないか。
雅和にはそんな予感がしていた。
いや、もしも自分と同じようなこうした非日常的な状態に置かれても、
あの二人が日常的な価値観や常識的な考え方を貫いているとしたら、
それはそれで困るような気がする。
娘の友達のパーティーに招かれて、その家の娘と肉体関係を持った後に、
全裸で家族の前に登場する。
そんな父親の姿を、常識的な娘が見るのだとしたら、
そんな夫の姿を、日常の中に埋まったままの妻の前に晒すとしたら、
(まさに家庭崩壊だ。父親失格だ。)
そんな雅和の思いとは関係なく、
地下室への階段への下り口で、
紗理奈はしゃがんでペニスをしゃぶったまま説明を始めた。
「わたしたち家族のあいだでは、普段は【プレイルーム】と呼んでいます。
もともとは両親専用の【秘密の部屋】って呼んでいたんですけど、
敏明と真奈美ちゃんが使い始めてから【プレイルーム】という名前に変えました。
その後は使い方によって【マッサージルーム】って呼んでみたり………。
【お仕置き部屋】とか【拷問部屋】と言われることもあるんですよ。」
そのまま本気のフェラチオへと進むのではないかと思われた時、
紗理奈はようやく立ち上がり、雅和にキスをしてから言った。
「普通の部屋の雰囲気とはかなり違うので、驚かないでくださいね。
今言った部屋の名前から………どんな部屋か想像しておいてください。」
階段をゆっくりと下りていくと少し大きめのドアがあった。
「ちなみに、このドアの向こうは防音設備が施されているので、
どんなに大きな音を出しても外部には漏れません。」
まあ、音というよりは声ですけどね。」
そこまで言って紗理奈は雅和の顔を改めて見つめると笑みを浮かべながら言った。
「おじ様。わたし、説明を始めると、いつの間にか言葉遣いが変わってしまうみたい。」
紗理奈は重厚なドアをゆっくりと開いた。
雅和は紗理奈に続いて部屋の中に入った。
部屋はすべて間接照明で照らされていた。
確かにそれ自体が普通の部屋の雰囲気とは違っている。
部屋全体はむしろ薄暗く感じるほど。
部屋の四隅にはそれぞれスタンドライトが置かれ、
中央に置かれたキングサイズのベッドを照らし出している。
天井にはフックのようなものがいくつも取り付けられていて、
小さめのライトが部屋のあちこちを照らしていた。
真っ赤な壁には幾重にも巻かれたロープや黒い革製のものがぶら下がっていた。
横の壁にはスライド式のドア、
そしてその前には不思議な形をした椅子のようなものが置かれていた。
(SМルーム?ここはラブホテルの一室か?)
入り口で立ち止まったまま動かない雅和の背中を紗理奈がそっと押した。
「真奈美ちゃんはそんなには驚かなかったみたいですよ。
興味津々だったって、敏明が言ってました。
もう5年も前のことですけどね。」
紗理奈がゆっくりと話しながら先導する。
「おじ様だったら、あの道具やあの椅子をどう使うかご存じですよね?」
「あ、ああ。使ったことはないけどね。」
「プレイと割り切って使うと、結構刺激的で楽しいものですよ。」
紗理奈は去りえなく言うと、いたずらっぽく笑った。
雅和は全裸の紗理奈があの椅子に縛られている様子を想像した。
自分はその横に立って、鞭をふるっている。
鞭打たれるたびに、歓喜の声を上げる紗理奈。
その顔がいつの間にか紗理奈から真奈美に代わる。
(まさか、真奈美が………。)
そんな疑念がわいてきたとき、紗理奈が言った。
「あ、真奈美ちゃんは使ったりしてませんからご安心を。」