譲司の成長 新たな局面へ。-2
そんなある日、譲司が店に出ると、南野が譲司に耳打ちした。
「初めての客だ。単独で来ているが、最初についたヒデキの話だと、
株でだいぶ儲けたらしい。譲司、あとは任せたぞ。」
譲司は黙って頷いた。
オーナーの南野が目を付けた客は、そのほとんどを譲司が担当することになっていた。
大概の客は譲司が自分のテーブルについた瞬間から譲司にくぎ付けになり、
そのルックスと巧みな話術、なによりも女の喜ぶツボを心得た接客により、
瞬く間に魅了され、譲司に溺れていくのだ。
それでいて譲司はすぐに別のテーブルに移ってしまう。
話が盛り上がり、これから、というタイミングで譲司に去られた客たちは、
譲司への思いを自然と募らせていくのだ。
譲司目当てに日を置かずに来店する客が増えた。
2度目の来客で、客が譲司を指名しても、
譲司はすぐにテーブルには行かなかった。
自分を指名した客に、自分の姿を見られることを意識しながら、
わざと店の中を巡回し、
最初についたホストとの会話が盛り上がっていないテーブルのサポートに入る。
そしてテーブルの雰囲気を盛り上げると、またすぐに別のテーブルへ移っていくのだ。
その間、譲司を指名した客は、ある種の嫉妬を感じながら譲司を待つ。
指名客が焦れたころを見計らって、譲司はそのテーブルをようやく訪れるのだ。
「申し訳ありません。せっかく来ていただいたのに、お待たせしてしまいました。」
そう言って飲み物を作る態度と何気ない仕草に、客は譲司にさらに惚れ込んでいった。
譲司によって巧みに焦らされた客は、譲司がテーブルについた瞬間、
譲司とできるだけ長い時間を共にしたいと考え、次々とオーダーを重ねていく。
そして帰り際には必ず、譲司の耳に、このまま店の外へ出て欲しいと囁くのだ。
オーナーの南野は、譲司にだけはその時間に関係なく、
譲司の判断で店外デートに応じることを許可していた。
そこで払われる高額な指名料とスペシャルサービスの料金は、
当然のことながら店の収入となるからだ。
女たちの申し出に、黙って微笑みながらうなずく譲司に、客は舞い上がり、
店が終わるまでオーダーを追加し続けた。
譲司はその客の隣を離れずに、心を込めて接客し続けるのだ。
その様子をちらちらと見ながら、他の客たちは心に誓うのだ。
(次に来た時には、すぐに譲司を指名し、
そのまま閉店まで独占し、店外デートに誘おう。)と。
南野はここでも客の嫉妬心や競争意識を巧みに利用しつつ、
譲司を最大限に活用していたのだ。
譲司を指名し、ラストまで独占し、
さらに店外デートでのスペシャルサービスをオーダーするとなれば、
客はその一晩だけのために百万単位の金がかかった。
それでも、週に何人かは譲司を独占する客が来店した。
おそらくは資産家の妻、会社経営者の妻、いわゆる富裕層の、
金はふんだんにあり、暇な時間もふんだんにある。
自分の美容や余暇のために、時間も金も自由になる中年女性。
そんな女性たちが譲司の店には通ってきていたのだ。
そうした女たちは金に糸目をつけずに、金の力で男を買い、
肉体関係では男たちにさんざん奉仕させ、男たちを奴隷のように使う。
そんなイメージがあるが、譲司を独占したがる女たちが譲司に求めたのは、
そうしたサービスでは全くなかったのだ。
ラストが近づくころには客は譲司に抱きつき、離そうとはしなかった。
店の外に出て二人きりになるのを待ちきれないかのように、
そして、自分たちを見ているだろう他の客たちに、
譲司は自分だけのものだと見せつけるために、
服こそ着たままだが、濃密な接触と愛撫を施すのだ。
股間に置いた手をゆっくりと動かしながら、譲司の首筋にキスをしていく。
シャツの中に手を入れ、胸を触る。
中にはズボンのファスナーに手をかける客もいたが、
譲司はそんな客の行動を拒むこともなかった。
店が終わるのを待ちわびていた客は譲司の手を引き、すぐにタクシーを止める。
店からごく近い場所に3軒ほどのラブホテルがあるのだが、
譲司との店外デートに出る客たちは、必ずと言っていいほど、
タクシーで10分ほどの距離にある、
高額な部屋が多くあるホテルへと足を進めた。
実はそのホテルには特別室やSМルームがあるのだった。
世の中に、どれほどの女が自ら縛られ、自由を奪われ、
屈辱的な言葉を浴びせられることに快感を感じるのかは知らないが、
不思議と、譲司の周りに現れる女たちは、
初めての女であった和美をはじめとして、
自由を奪われた挙句に辱められ、
屈辱的な言葉で罵られた挙句に半ば暴力的に犯されることで快感を得る女が多かった。
譲司自身がそうしたプレイを好んでいたわけではなかった。
ただ、和美との初体験が、和美の元亭主によって、
譲司の意思とは関係なく強引にさせられたものだったこと。
それが逆レイプまがいの、しかもアナルセックスであったということ。
そしてショーとして様々なプレイで女たちを辱しめてきたことなど、
ある種の異常な性体験をしてきた譲司にとっては、
そうした女たちの要求さえ、不思議なこととは思えなかった。