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THE 変人
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竜宮城-2

空を向いている瀬奈とは裏腹に海斗は段々と近づく海面を見て少なからずとも恐怖を感じている。このまま海面に叩きつけられたら死んでしまうのか、運良く助かるのか想像もつかない。強いて言うなら死ぬ方に1票入れたいところだ。海にこんなに恐怖を感じた事はない。

「海斗、ありがとね?本当に感謝してる。海斗と出会えて本当に良かった…。」
海斗をジッと見つめる瀬奈。
「よせやい!まるでもう会えないみたいな言い方!俺はこのまま瀬奈をまた救って、今度こそ一緒に暮らすんだ!」
「そうなったら良かったのにな…。でも海斗には海斗の生きる場所があって、私は私の生きる場所があって、きっと私と海斗は同じ場所で生きる事はできないものだと思うの。そう言う運命なの。」
「運命って何だよ!?人の人生は誰に決められるもんじゃない。自分が決めるもんだ!」
「だからよ。自分で決めたから私は竜宮城に行くの。」
「竜宮城なんか現実にある訳ないだろ!?現実を見ろ瀬奈!!」
必死に説得する海斗。そんな海斗とは対照的な、悟り切ったかのような表情で瀬奈は言った。
「あるよ…?」
と。

その言葉を聞いた瞬間、何か不思議な感覚に陥った海斗。一瞬時間が止まったかのように思えた。緩やかに落下していた体が宙で止まったような感覚だ。そんな中、瀬奈が言う。
「連れてってあげる…、竜宮城に…」
瀬奈の言葉に呆気にとられる海斗。
「えっ!?」
次の瞬間、それまでのスローモーションのような異次元的空間から現実に戻ったかのように、2人の体は急激に海面に向かって落下して行った。
「うわぁぁぁぁ!!」
海斗は絶叫した。これまで感じた事のないような恐怖だ。景色など見えない。一瞬にして海面が目前に迫っていた。

「海斗さぁぁぁん!!」
崖の上では勢い余って落ちてしまいそうであった幸代の体を康平が寸前の所で捕まえた。

ドッポーン!!
激しく水しぶきが跳ね上がる光景を崖の上から幸代は見た。
「海斗さん!海斗さん!海斗さん!!」
取り乱し涙を流しながら叫び続ける幸代の声が海に大きく響いたのであった。

2人を飲み込んだ海は、すぐに何事も無かったかのように穏やかな表情を見せていたのであった。


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