マツが小倉に舞い戻ってきた-4
女郎屋を後にした松金は魚町近辺を当てもなく歩いていた。
「おい、おいちゃん。カキやろうか?」
声が聞こえ松金が見上げたのは、紫川の岸辺に生えている高さ五メートルぐらいの柿の木だった。
子供が脚を滑らせようとして体勢を崩した。
「ボン、危ないぞ・・・・・」
「きゃー」
「ドッスン」
「ボン、大丈夫か?」
「あ、痛い・・・・・」
落ちたのを目の当たりにした松金は駆け寄り声をかけた。
悪戯をしても痛さに勝てない子は涙を頬に流している。
「ボン、どこが痛んじゃ・・・・・」
「おじさん、脚が・・・・・」
足をくじいただけで怪我はしていないようだった。
「ボン、家はどこじゃ?おじさんの背に乗れ」
「魚町だよ・・・・・・」
松金は子供を背負って、子の家路へと向かった。