急展開-7
康平の地元警察の協力を得て、瀬奈の足取りが分かった。昨日の朝10時に福岡発千城空港11時着の便に搭乗し、千城空港を出たと言うシンプルなものであった。その後、タクシーで、それともバスで移動したのかは調査中だ。いずれにしても普通に行けば遅くとも夕方までには海斗の家についているはずであった。
「家を飛び出して来た事を言いづらくて海斗君に逢うのを躊躇ってるのかな…。市内のホテルにも問い合わせてみるか…」
康平がそう言ったが、海斗にはそれがピンと来なかった。
「何か…、はっきりとは分からないけど、そんな単純な理由じゃないような気がする…」
海斗はそう言って考え込んだ。
「とにかく瀬奈ちゃんがこっちに来てるのは確かなんですから、手分けして市内とか探してみますか?」
幸代の言葉に康平と美香は頷いた。いてもたってもいられないと言うのが本音だ。何かしら動いていないと焦る気持ちを抑える事が出来なかった。幸代は康平を乗せて木戸駅まで行き、そこから二手に別れてホテルなどを探す。海斗は思い当たる場所を車で探す。美香にはもし瀬奈が来た時の為に海斗の家で待機してもらう。
車で駅に向かう幸代と康平。話には聞いていたが幸代とは初対面だ。幸代の印象は活発で何事もテキパキこなす美人と言った感じだ。康平も幸代の見た目と乗っている車のギャップを感じていた。
「こちらにいる時、随分お世話になったようで、ありがとう。」
「いえ、こちらこそ仲良くさせていただきました。私、あまり友達多い方じゃないので、瀬奈ちゃんといると楽しくて。」
「しかし、暴れたんじゃないのかな?」
仕事とは言え海斗と行動を共にする幸代に瀬奈が嫉妬し病気が出たのではないかと思った。
「一番初めに会った時、暴れました。怖かったです。でも理由を聞いて次に会った時に誤解を解いてからは少しずつ私の事を理解してくれました。誤解を解くと言うより、私自身が瀬奈ちゃんの病気を心配してたので、それを分かってくれたんだと思います。それからは本当に親友でした。一緒にショッピング行ったり、ご飯食べたり。これが瀬奈ちゃんの本当の姿なんだなって。瀬奈ちゃんと一緒にいる時間は凄く楽しかった…。」
2人で遊んだ日々を思い出し穏やかな笑みを見せる幸代を見て康平は行った。
「私は勘違いをしていたようだ。瀬奈にとって竜宮城とは海斗君なのだと思っていた。でも違う。瀬奈にとって海斗君や幸代さんらがいるこの街自体が竜宮城だったんだ…。いくら私や妻が一緒にいて守っても、そこは竜宮城じゃなかったんだ。ここで生活する事こそが瀬奈が瀬奈らしくいられると言う事なんだな。」
康平は少し寂しそうな表情を浮かべてそう言った。