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「初夜」は四十九日の夜
【その他 官能小説】

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「初夜」は四十九日の夜-2

「義姉さん、義姉さんは幾つなのっ?。僕より5つ若いんだよ!。美津子と僕は9つも離れてたけど、義姉さんだって、僕より5つも下なんだよっ!。まだ適齢期じゃないか!。義姉さんは僕のために、みたいな言い方してるけど・・・・・・・あぁっ、ああ〜っ、そうかぁ。わかった。義姉さん、好きな人がいるんだ。その人と一緒になりたいから、僕がここにいると邪魔なんだ。そうなんでしょっ、義姉さんっ?。なあ〜んだっ、そうか。このマンション、美津子の名義だし、遺産相続目当てで居座ってるなんて思われたくない。そういうことなら、僕、出て行くっ!」

わざと邪険に言い放った。
そんなこと、これっぽっちも考えてはいない。ただただ、義姉を動揺させるために言ったのだ。

「な、何を言ってるの、芳樹さん。私、私、あなたが何、言ってるのか、わからない・・・」
「僕を追い出して、好きな男の人と一緒にここで暮らしたい。そうなんでしょ?。そう聞いてるのっ!」

しばらく無言で私を見つめていた義姉の目から、大粒の涙がポロ、ポロッとこぼれた。

「ちっが〜〜〜うっっ。違うわ。違う、違うのよ、芳樹さん。そんなこと、そんなこと、あるわけない。あるわけないじゃない。どうしてそんなこと言うの?。意地悪言うの?。私だって、私だって、芳樹さんにずっといてほしいわよ。一緒に暮らしたいわよぉ。私もあなたのこと、好きだったし、美津子が時々うらやましかった。だけど、美津子が死んだのよ!」
「だから?、だから、どうなの?」
「えっ!?、だ、だから、一緒になんか住めないじゃない・・・」

もくろみは成功した。言わせたかった言葉を、義姉は私の期待通りに口にした。
義姉の手を取り、両手で包み込んだ。義姉は思わず手を引っ込めようとしたが、私はしっかりと握りしめた。

「さっき、何て言った?。義姉さん。さっき、何て言ったの?」
「・・・・・・・・」
「僕のこと好きって言ったよね!。美津子がうらやましかったって言ったよねぇ!。ずっと僕にいてほしい、一緒に暮らしたいって言ったよねぇ!。なのに、出て行けって言うの?。僕の答えを言うね。義姉さん、しっかり聞いてっ!。絶対忘れちゃダメだよ、いい?。僕はね、ここを出て行かない。ぜえ〜〜っっったい、出て行かない。義姉さんから絶対に離れない。義姉さんが僕を好きだって言う以上に、僕は義姉さんが好きっ。美津子が死んで、そのことに気付いた。僕は義姉さんを愛している。他の男になんか、絶対に渡さない」

テーブルに突っ伏して肩を震わせていた奈美の泣き声が、号泣に変わった。
顔を上げ、両手を振り上げ、殴り掛かってくる。
涙と洟で顔をぐちゃぐちゃにし、何かをわめきながら、私を殴ろうとしている。
ばたつかせる手を払いながら、私は義姉を抱きかかえ、居間のソファに運んだ。
洗面所でタオルを固くしぼり、乾いたタオル2、3枚を持って、居間に戻る。
泣き続ける奈美の顔を無理矢理上に向け、濡れタオルで拭く。
終わると奈美は私に背中を向け、ソファの背もたれの方を向いて、また泣き始めた。
ソファの前にあぐらをかいた私は、そんな義姉を見守りながら、やさしく背を撫でた。

30分ぐらいそうしていただろうか。
やがて、泣き疲れた奈美が体の向きを変え、上を向いた。
泣きはらした真っ赤な目を私に向け、『あっかんべぇ〜』と、舌を出した。

そして・・・・・・「嫌いっ。大っ嫌い。芳樹さんなんか、大っ嫌いよ」

これ以上の意地悪をするつもりはなかった。
奈美の両肩を、そっと抱き寄せる。ゆっくりと顔を近づける。
目をつむろうとする義姉。


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