神は何処にいる?〜ビジネス〜-1
なんでもビジネスに繋がる時代。
宗教もビジネスだ。
自分(信じる神)を信じ込ませ利潤を獲る。
自分を信じ込ませるのはキャバ嬢やホストのそれと全く同じである。
ここに職に困った25才の男がいた。
名をエイジといい、しがないフリーターである。
バイトもクビになったので職探しの最中、彼は閃いた。
「宗教プランナーをやろう。」
宗教は利潤を獲ないと始まらない。
信じるべき神も食料提供してくれないから。
陰湿で近寄りがたい雰囲気を醸し出しがちな宗教をコンビニエンスのような身近なものにしよう!
そんな発想から彼はネットで
宗教プランナーやります。信者が増えずに困っている方、財政難な宗教の方お気軽にメールください。
先着3名の方は無料診断します。
と掲示した。
4日後、書き込みがあった。
「はじめたばかりで信者がいません。
どうぞ診断してください。
真堂の集い 創始者深海」
来た!
さっそく返信、週末に会うことになった。
郊外の喫茶店で待ち合わせしたのだが、来たのは50代半ばの普通のおじさんだった。
話を聞くと夢のお告げがあり、開教したようだ。
「人々を救いたいんです。」
彼は再三切なそうに訴えかけた。
聞こえのいい正論を並べる偽善的な含みに耐え切れず、エイジは尋ねた。
「でも……儲けたいんでしょ?」
深海さんは言葉を濁し跋の悪い顔をしながらかぶりを下げた。
「だったら話は簡単です。
まずは無償で人の相談にのってあげなさい。
最初から利己的に進めてついてくるお人良しは少ないから。」
深海さんはその後エイジの助言と協力で自分のサイト(宗教色の全くないもの)をはじめ、人々の悩みを親身になって聞いた。
返答はもちろんエイジのアドバイス通り真心を込めて返した。
中にはそれで離婚問題を解決した夫婦や自殺を踏み留まった女子高生などもいた。
そして話はすすみ、サイトの常連も増えてきてオフ会をやろうという話になった。
日時は来週の土曜。
再びエイジは深海さんといつもの喫茶店で作戦会議を開く。
「このオフ会が最大のチャンスです。あなたの宗教の幹部を探すチャンスです。」
と力強くエイジは言う。
「信者じゃないんですか?」
不安そうに深海さんは尋ねた。
「もちろんです。いきなり信者を取り込んだ所で先の発展はありません。
まずは力強い協力者を集めるんです。」
深海さんはみるからに不安そうだった。
たまらずエイジは続ける。
「私も参加しますのでご安心ください。
もちろんあなたとは面識ないふりしますんで心得ておいてください。」
エイジはサクラ役に撤し、真堂の集いの信憑性を高める役にまわる、深海さんはこの場で宗教をほのめかしながら幹部役を取り込む。と綿密な打ち合せが続いた。