責任-4
「一度ネットに出てしまうと、もう取り返しのつかない事になる…、死ぬまで、いや、死んでもなおネットの世界に永遠に生き続けてしまいます。我々はリベンジポルノ問題などで女性が裸の写真をネットに流出させられ、またそれをネタに脅される事件が多発している事を番組で取り上げてまいりました。」
奈々は自分自身に話しかけるような低い口調で言いながらブラウスのボタンを外し始める。初めは何をしてるんだと不思議に思った視聴者だが、上から一つずつボタンが外されて行くにつれみんなが目を疑い始めた。番組を確認していたジャパンTV上層部の人間は焦り、すぐさまスタッフに電話をする。
「おい!一体何をしているんだ!?脱ぐつもりか!?今すぐ止めさせろ!!」
しかしスタッフは言った。
「すみません、でも何があっても鈴井からカメラを外すなと言う指示なので…」
「だ、誰の指示だ!?」
「社長です。」
「し、社長…!?」
確かに脇にいる社長は止める気配は全くない。
「な、何を考えているんだ…!?」
唖然として放送を見つめている中、とうとう奈々はブラウスのボタンを全部外してしまった。セクシーなランジェリータイプの黒のブラジャーが画面に映っていた。
「たいていの女性は愛する恋人を信じて裸の写真などを撮らせる事が多い。しかし別れた瞬間からその写真は男性にとって武器になります。女性にとっては全ての抵抗を奪われてしまう大変危険な存在になってしまいます。男性にとっては気分がいいでしょう。しかし女性にとっては愛した者に裏切られた悲しみと、そして大きな不安、恐怖と戦いながら生きていかなければなりません。男性にとっては軽い気持ちで流出させるのかも知れませんが、女性にとって裸が永遠に世間の目に晒されると言う事は、生きていながら死んでしまう事と同じです。ネットで自分の名前を検索して、裸の画像が出てきたら、その苦しみは計り知れないものだと私は思います。」
奈々はそう言いながらスカートに手をかけゆっくりと脱ぐ。黒のガーター姿の下半身が露わになる。
ネットでは大騒ぎになっていた。
「鈴井奈々が脱いでる!!」
「黒とか、たまんねー!」
「オッパイ、デカっ!」
「エロい体してんなー!」
「綺麗な体!憧れるぅ♪」
「ヌキます!」
女性からは綺麗な体を褒めるコメントが目立つ。
「今、ネットでは私に対する様々なコメントが寄せられているでしょう。否定的な意見、冷やかし、中傷…、正直それを見るのは怖いです。リベンジポルノに怯える女性の気持ち、少しだけですが分かるような気がします…。」
凛としていた奈々が、顔を赤らめ涙をうっすらと浮かべ、そして震えているようにも見えた。視聴率はグングン上昇して行くのであった。