スキャンダル-5
奈々は変わらず神妙な面持ちでニュースを伝える。
「では事件の詳細についてお伝えしたいと思います。ジャパンTVでは、所謂韓流ドラマやK-POPなど積極的に韓国の番組を取り上げ、日本の韓流ファンの望む番組作りをして来たとともに、日韓の友好関係に尽力して参りました。今回逮捕された中本容疑者はその番組制作に大きく関わっていましたナダルミックス社のチーフプロデューサーであります。中本容疑者は月に2、3回、韓国の流行などの情報収集の為に韓国へ出向いておりました。確かに韓国の現状を把握して番組制作に大きく役立ててはおりました。しかしその傍ら、日本での得意先への接待の為、売春目的で韓国の美女に目星をつけ、日本での芸能活動をちらつかせ日本に来日させ、渡航ピザの期限を過ぎるまで実際に番組に参加させたり、デビューの為のレッスンを行なっていました。しかしピザの期限が切れる事を伝えず、少女達はそれに気付かず日本でのデビューに向けてレッスンに明け暮れていたとの事です。気付いた時には既に違法滞在者として自分ではどうしようもない状態にさせられていたとの事です。犯罪者である事を意識させ、そこから接待への派遣を始めると言うのが中本容疑者の手口だったとの証言を得ました。パスポートは取り上げられ、警察に相談するにも、相談に行けば不法滞在者として身柄を拘束されてしまう…、自分の経歴に傷がつけばアイドルになると言う夢は叶わなくなる、彼女達は八方塞がりになり、中本の指示に従わざるを得ない状況で本日まで接待を続けさせられていたとの事です。少女の夢を利用し、人生を滅茶苦茶にした中本容疑者のこの犯行、非常に腹立たしいとともに強い怒りを感じます。」
原稿に目を向けず、カメラを見つめて事件を伝える姿に、それが事務的ではなく、奈々の心からの言葉である印象を視聴者に与えた。奈々からの強い憤りが画面を通じてヒシヒシと伝わって来た。
「中本容疑者の売春斡旋は2年前から続いていたとみられ、不法に滞在させられ韓国に帰れず、今も日本のどこかでひっそりと生活している韓国人女性は100人を超えているとみられます。現在警察では彼女らを救済すべくその行方を調べ始めたとの事です。この放送をご覧になっている被害者の皆様、勇気を出して警察に相談なさって下さい。あなた達は犯罪者ではありません、被害者です。お願いです、是非警察へ相談して下さい。」
奈々はまた深々と頭を下げた。