スケベな身体の四十路ババアはハードコアAVに出ろ!?-1
「奥さん、すっごい綺麗ですね。今、お時間あったりします?」
何気なくデパートを歩いていた五条朱代は、見るからに遊び人臭い若者にそう誘われた。
「いや別に変な下心とかあるわけじゃないスよ? 待ち合わせにすっぽかされてヒマしてるんで……もしよかったら、なーんて」
若者の目は、値踏みするように朱代のむっちりした胸元や腰周りを観察している。
ニットを着ているからボディラインが如実に出ている。自身では太り気味の感があるが、男にとっては真に「いやらしい」「食べ応えのありそうな」肢体であろう。
四十四になる朱代だが、見た目にはまだ三十代半ばかそれより下とも間違われる。
真っ昼間、無為に過ごしているよろめき主婦とでも思われたか。
(ちょっとからかってやろうかしら……)
朱代に酔狂な悪戯心が燃えた。
連れて行かれたのはホテルではなかった。
裏通りを入った雑居ビル、ボロいエレベーターを三階まで上がった一室である。
ドアのガラスには「ビッグエンタ企画」とあった。
(ここって……)
朱代はその字面に心当たりがあった。
内心で舌打ちしたが、表面にはまだ出さない。
戸惑っている普通の奥さま然として勧められたソファにかけると、人相の悪い黒服に取り囲まれた。
「奥さん、これサインして貰えます?」
差し出された紙っぺらには、契約書とあった。
無修正、膣内射精、顔面射精、口内射精、ごっくん、SMプレイ、輪姦、アナルファック……並んだ要項全てにレ点チェックが入れてあった。
さらには、出演料一律一作五千円、上記内容に同意しますという末尾まできっちりレ点入り。でたらめな契約書である。
さすがに鼻で笑うしかなかった。
「おいおばさん、なんだその態度?」
黒服の一人がソファをバシィッと叩き、吼えた。
「サインしないとおうち帰れねえぞ?」
「あんたみたいなクソエロい身体の雌豚、AV出る以外に存在価値あるか?」
「おらっ、時間勿体ねえからさっさとサインしてスタジオ来いやババア!」
口々に凄んでみせ、黒服たちは凶悪なオーラを発した。
しかし、朱代は毛ほども動じなかった。