スケベな身体の四十路ババアはハードコアAVに出ろ!?-8
「AVのことでっか」
大谷が先回りして言った。
「実はなあ、昨日あんさんが梶谷に電話してきたとき、わしもここにいてましてん。話聞いて、こらおもろい思いましてなあ。あんさんの別嬪ぶりは極道界でもよう取り沙汰されてまっさかい、その上玉を脱がしてコマしたるちゅうことになったら、なんぼでも金出す奴おるやろ思いましたわ」
煙草を咥えた大谷に、素早く梶谷が火を差し出した。
「わしとこの総長に電話したら、すぐ三億出すちゅう返事や。他もすぐ集まる思うてあっちゃこっちゃかけ回したら、二時間経たん間にすぐ十億の予算集まりましたでえ」
自分の全く知らないところで、そんな汚らわしい話が動いていた。しかも発端は腹心と信じていた梶谷である。
朱代は胸がむかむかしてくるのを堪えた。
「そっからは急ピッチで根回し運動や。ニュースサイトやっとるフロント企業はもちろんのこと、テレビや週刊誌にもチョロッと情報流したりしてな」
「で、私が姐さんの言葉を確かめるために、録音しに伺ったって訳ですよ。おかげさんで証拠がバッチリ残せました」
梶谷がボイスレコーダーをかざして見せた。
「そんなものが証拠になると思ってんの?」
「解釈の仕方によっては立派な合意の表明です。しかもそれが全国に大々的ニュースとして公式発表されちまったんですからね」
「あたしは承知しないよ!」
きっぱりと言い放つ朱代に、梶谷が歩み寄った。
「姐さん……俺がまだ駆け出しの頃、仰った言葉を今この場でお返ししていいですかね?」
やけに自信ありげな顔が薄気味悪い。
「俺がケチなケンカで堅気さんに迷惑かけたとき、オヤジと一緒に俺をどやしつけた姐さん……あの時、俺が二度とこんな馬鹿な真似はしませんって言ったら、姐さんはこう仰った」
「……」
「二度と同じ真似したら承知しない、極道は吐いた唾は飲まないんだよって」
ヤクザ社会の論理をこんな形で持ち出してくるかと、朱代は冷や汗をにじませた。
「あれは忘れもしない二十三年前のことだから、姐さんはオヤジに嫁いですぐの二十一か。それでも大した貫禄でしたよ」
「それとこれとは話が……」
朱代が反駁しようとすると、
「姐さん、こういうことも仰ってましたね。言い訳は見苦しいって」
すかさず梶谷が斬り込む。
何を口にしても、墓穴を掘るばかりのようだった。
「あきまへんなあ、御寮はん? テレビ通して全国民に宣言してもうたんや。ごちゃごちゃ抜かしてんと、潔うせな」
大谷が、着物の上から舐め回すような視線を送って言った。