明かされた街の秘密-2
(スケジュールだとかおもてなしだとか、全くわからないことばかりだ。)
オレの頭はまたもや混乱し始めた。
やはり麗子にもっと聞いておけばよかった。
この街や学校が普通ではないことは少しずつ分かってきたが、
麗子の家や両親についての予備知識が全くないオレは、
どうしたものかと勧められたコーヒー片手に途方に暮れていた。
麗子は隣で母親と学校での出来事について楽しそうに話している。
麗子はオレの股間に置いたままの手で時々オレに同意を求めてきた。
そんな娘の行動を見て母親が何も言わないのを不思議に思いながら、
オレは形ばかりの相槌を打っていた。
コーヒーのお代わりを聞かれた時、リビングのドアが開き、
30代前半の、向井〇似の男性が入ってきた。
「あ、あなた。こちら麗子の担任の松岡センセ。先ほどからお待ちかねよ。」
「あ、松岡です。お邪魔しております。」
「麗子の父親です。噂はいつも麗子から聞かされてます。一度お会いしたかった。」
「じゃあ、あなた。わたしはそろそろ失礼しますから、あとはよろしくお願いします。」
「ああ、分かった。今日は遅くなるのかい?」
「いえ。2時間ほどの予定ですから。それまで先生を引き留めておいてくださいね。
わたし、まだ何もおもてなしできていないので。」
「わかった。じゃあ、お前もよろしくな。」
(2時間?それまで引き留めておかれると、オレは帰宅が夜中になっちまうぞ。
でも興味はあるな。おもてなしというのが気になる。コーヒーだけじゃなさそうだ。)
「先生。本当に申し訳ないんですけど、わたくしこれで失礼させていただきます。
お願いですからまだお帰りにならないで。あちらが済み次第すぐに参りますから。」
彼女はわざわざオレの目の前まで来て深々と、しかもゆっくりとお辞儀をしていった。
オレの真正面にニットシャツからこぼれそうなバストが見えた。
(まさか、オレに見せようとしたのか?いや、そんなことは…。)
「いや、先生。本当に申し訳ない。
あいつも予定がなかったらずっとご一緒したかったはずです。
あいつの目がそう言ってました。」
「奥様の目が?」
「ええ。あれは先生のことを気に入ったという目です。
本当にあいつが戻るまで、待ってやってください。」
ポカンとしているオレを見かねたのか麗子が口を開いた。
「ねえ、お父さん。」
「ん?どうした、麗子?」
「センセはね。詳しいこと、ほとんど知らないでこの街に来たんだって。」
「ほとんど知らないで?じゃあ、学校のこともか?」
「うん。校長先生、何も話さなかったみたい。」
「そうか、じゃあ、きちんとお話ししておいた方がいいな。
いや、先生、失礼しました。
わたしはてっきり先生が何もかもご存じの上で、
あえてこの街の学校に来てくださったんだとばかり思ていました。
大変申し訳ありません。
わたくし共の話していること、お分かりになりにくいことばかりだったかと思います。
いや、まったくもって申し訳ありません。」
「いやいや、お父さん。そんな、頭を上げてください。
オレ…ぼくの方こそ、麗子さんに少し話を聞いて、
もっと詳しいお話が聞けるというので、こうして突然お邪魔したわけです。」
「そうでしたか。いや、しかし校長も困ったもんだな。
大事なことなのに、お話ししていなかったなんて。
そうですか。では、学校の方でも戸惑われることが多かったのでは?」
「あ、はい。そう、ですね。」
「だとすると……うちの娘も、なにか失礼があったのではないですか?」
「あ、い、いえ、麗子さんは、なに、も……。」
「いや、うちの麗子のことだ。
もう既に何度か先生のことをお誘いしてるんじゃないですか?」
「お誘い?」
「今日みたいなことよ。センセ。」
麗子が股間に置いたままの手でズボンの真ん中をぎゅっと握った。
「お、おい、な、なにを、」
オレは思わず声を上げてしまった。
「コラ、麗子。先生もビックリなさってるじゃないか。」
「大丈夫。今日でかなり進展したから。」
「やっぱり。そんなことだろうと思っていたよ。」
「でも、まだ全然かな。
キスも直前回避になっちゃったし。
モミモミとグジュグジュまではいくつもりだったんだけどな〜。」
麗子の父親は顔色一つ変えず、娘の話を聞いている。
「そりゃあそうだろ。事情をご存じないんだ。
教え子にそんなことが出来るものかって思ってらっしゃったはずだ。」
「じゃあ、お父さん。センセが納得するようにちゃんと話しておいて。
そうじゃないと若菜だけがいい思いすることになっちゃうから。」
麗子は父親の顔に自分の顔を近づけ、甘えるような口調で言った。
「若菜ちゃん?ああ、今井さんとこの娘さんか。若菜ちゃんがどうした?」
「今日、センセのをゴックンしちゃったの。それも授業中に。」
「へえ、そりゃあ先生もさぞかし驚かれたでしょう。」
「あ、いや、その、あの。」
「あ、先生。大丈夫です。正直な反応をしてもかまいません。
教育者がとか、道徳がとか、そんなバカげた無意味なことを言うような人間は、
この街には一人もいませんから。
明日はぜひ、麗子にゴックンさせてやってください。」
オレはこの場合、はいと答えるべきなのかどうなのか、まだわからなかった。
しかも、担任に対して明日はうちの娘のフェラチオを受けてくれと頼む父親とは、
いったいどういう父親なのだろう。
「やっぱり先生の理解の範疇を超えているみたいですね。
わかりました。わたしでわかる限りのことをお話ししましょう。
麗子。あれを持ってきておくれ。」
「はい。」
麗子は父親に促され、リビングを出て行った。
(いったい何を持ってくるつもりなんだろう。)