強者-18
番組終了後、次郎は人目を避け廊下の隅に奈々を呼んだ。
「さっきのは俺への当て付けか?俺の事を言ってたんだよな?いいのか?お前の恥ずかしい動画、流すぞ?」
凄む次郎に奈々は平然としていた。
「どうしたんですか?気のせいですよ。私はむしろフル勃ちさんの元気なチンポに満たされたんですから。素敵でした、さすがフル勃ちさんです。いつまでも堅くて…」
「な、ならいいんだが…」
勘違いだったか…、一瞬そう思った。しかし脅されている女の様子ではない。対等…、いや上から見ているかのような余裕の態度が気になる。
「私は古舘さんに抱かせろと言われればいつでも抱かれる気持ちでいますよ?私をプライム・ゼロのキャスターに使っていただけるなら何でもします。ですからくれぐれもスキャンダルなんか起こさないで下さいね?古舘さんがいなくなったら私を強く推してくれる人がいなくなっちゃうので。」
「あ、ああ。」
次郎がまだ何かを疑っているような姿を見せる。そんな次郎を嘲笑うかのような言葉を奈々は口にした。
「でも今日の放送で、きっと私の株は大きく跳ね上がった事でしょう。現にネットでは私を称賛する声がいっぱいなんです。ほら。」
奈々がスマホを見ると確かに奈々を称賛する声がたくさんアップされていた。その中に古舘次郎の様子が明らかにおかしかったから、もしかしてセクハラやパワハラに何か心当たりがあるのではないかと言う声も少し上がっていた。動揺はそのまま視聴者に伝わってしまったみたいだ。次郎の額からまた汗が滲んで来た。
「古舘さん、結構女子アナに手をかけてるみたいですね?佐藤瑞樹さん、八坂恵さん、狩野彩さん、三鷹百合さん…、噂は聞いてますよ?」
「…、随分と詳しいな…」
「あくまで噂を聞いただけですよ。私もその中の一人ですけどね?私も被害者の一人になるんですかね…?被害者達が結束して古舘さんを訴えたらマズいですね?」
「…な、何をたくらんでる…?」
「人聞きの悪い…。何も企んでませんよぅ。」
「いいか?俺にはお前のいやらしくて恥ずかしい動画があるんだ。変な気は起こすなよ?」
そこで奈々は人を食ったかのような口調で言った。
「そんな動画、ありましたっけ??」
と。
「何言ってんだ!?撮られてたの知ってんだろ!」
次郎はそう言ってスマホから動画を探す。が、ない。
「な、何でないんだ!?何故だ…!?あ…、もしやお前、俺が気を失ってる時に…」
手を広げて戯けながら言った。
「さぁ…」
「と、惚けるな!!」
そんな次郎にも全く動じない。まんまと脅しネタを消去され怒りを露わにする次郎を余裕の笑みで見つめていた。
「あ、そう言えば…」
奈々は何かを思い出したかのようにスマホから動画を探して再生した。すると昨日のハメ撮りの中で次郎の事だけが映し出されている動画が流された。
「な、何だこれは…!?」
俺はフル勃ち次郎と呼ばれていると言いながら自分でペニスを映す映像から、気絶してぐったりとする姿まで、見事なまでに次郎しか映っていない動画であった。
「へ、編集したのか!?」
奈々はニコッと笑った。
「これ、娘さんに見せようかなぁ…」
「お、脅すのか!?」
「人聞きの悪い事言わないで下さいよ。私もそんな酷い事しませんよ。 私はプライム・ゼロの椅子に座れていればそれでいいんです。私はプライム・ゼロでもっともっとキャリアアップをしたいと思ってるので、どんどん意見を言って番組を私の色に染めたいんです。まぁ古舘さんはきっと大々的に私に協力してくれるでしょうから、これからも宜しくお願いしますね?あ…、あと、涼子さんに宜しく言っておいて下さいね?」
「り、涼子と知り合いなのか!?」
「ええ。たまにご飯食べに行ってます。お父さんの事、誇りに思ってるって言ってますよ?いつも。ンフッ。じゃあ♪」
不敵な笑みを残して奈々は歩いて行った。
「た、立場が逆転しちまったじゃねぇかよ…。まさか涼子と繋がってるとは…。俺はもうあの女の言いなりじゃねぇか…。しまった…爆弾女踏んでしまった…」
次郎は肩をガックリと落として項垂れたのであった。