1:1:1〜佐々成将〜-1
珍しく俺が寝坊したその日、ガキの頃から何かと縁があって今じゃ俺の親友に成り上がった豊田早将に、好きな女ができた。
相手は転入生の郡司佐和。
とてつもなく肌が綺麗で、声が可愛くて…良いところを上げだしたらきりがない。そんな女。
早将の一目惚れでした。
早将が佐和を追い掛けるものだから必然的に俺も佐和と仲良くなり、半年後には仲良し3人組と呼ばれるようになりましたとさ。
「きいてー!!宝くじ当たっちゃったぁ〜♪」
残暑が厳しい秋の事。
佐和は勢い良く教室の戸を開けると、紙切れをひらひらさせて飛び込んできた。
「まじ!?いくら?いくら?」
俺と話していた早将は、佐和と宝くじを見るなりハイテンションで席を立った。
「せ・ん・え・ん♪」
うふっ♪とポーズを決める佐和に、早将は派手にツッコミを入れる。
「安ッ!?子どもの小遣いかて!!千円ぐらいで喜ぶなよ…」
「あ〜早ってば、そんな事言うんだぁ?せっかくこの千円で帰りにアイスでも奢ったげようと思ったのにぃ〜。いいよ成と二人で行くから」
二人の様子を黙って見ていた俺に、佐和は話を振った。
「成はチョコミントだよね?」
くったくのない笑顔が俺に向けられる。
「佐和はバニラだよね?」
俺は佐和のマネをして訊ね返す。…笑顔ではないけど。
「当然!!」
今度は白い歯を見せて子どものように笑った。
失言で取り残された早将は、手を顔の前でパンッと合わせ俺達の間に割り込んだ。
「佐和さま、神様、仏様!!千円を馬鹿にしてすんませんでした!!俺っちにもアイスおごってくんなまし?」
合わせた手を少し下げて、上目遣いで佐和の表情を確認する早将。
佐和は偉そうに一息つくと「仕方ない、許してやるぞよ」と変な口調で早将を許した。
それが可笑しくて俺が吹き出すと、今度は標的が俺になった。
「何が可笑しいでござるか?成将どの?」
調子に乗った佐和は声と顔まで変えて俺を笑わすため、視界に入ろうとする。
普段あまり笑わない俺は、笑った顔を見られるのが恥ずかしいのと佐和の顔が可笑しいのとで、体を震わせながら必死に顔を背けた。
「やべぇ〜!!佐和の顔でらうける!!」
げらげら腹を抱えて笑う早将。
「成将ちゃん、こっち見なさい?」
戦法をかえてきた佐和。
「佐和…マジやめろっ…」
必死で笑いを堪える俺。
大抵こんな感じ。
早将と佐和が戯れて、傍観していたはずの俺がいつのまにか輪に加わって、三人でばか騒ぎする…そんな感じ。
これが結構楽しくて、ここが結構居心地がいい。
出来れば一生こうしていたい…と思ったりもした。
「ねぇ、成は大学行くの?」
ある日、いつものように俺が早弁していたら、佐和が突然聞いてきた。
高三になったら考えればいいと思っていた俺は、当然わからん…と答えた。