12月:クリスマス-2
暗さに任せてそっと握られた手は振りほどくには寒すぎて。
握り返しはしないまでも、そのままその場所で温められる。
「ずっと。ほのかちゃんを見ていたんだ」
まばゆいばかりのイルミネーションを見ながら歩いていた秋田さんがそっとつぶやく。
「え?」
「夏の前に、ジャズバーに行ったこと、覚えてる?」
ゆっくりと秋田さんが話しだした。
「はい」
「青木に頼んだんだ。ほのかちゃんと飲みに行きたいって」
「え・・・」
イルミネーションを見ていた秋田さんの視線はいつの間にか私に向けられていて
「青木を責めないで」
「・・・」
葵も知ってるの?
私のそんな疑問が顔に出たのか、
秋田さんは慌てて
「伊藤さんは何も知らないから!」
と葵をかばった。
確かに。
葵は知っていたら黙っていられないタイプだ。
「ドイツの彼と・・・ほのかちゃんが付き合う前から好きだったんだ」
前、から?
「経理に新田がいるだろ?同期なんだけど。
同期会の連絡をしに行ったのがほのかちゃんを見た最初」
「・・・」
「可愛い子だな、と思って。それから気になりだして・・・ずっと好きだよ」
秋田さんが、言葉で好きと言ってくれたのは初めてで
箱根から帰って来た時、抱きしめられたけど
私の困る顔を見てそっと腕を解いてくれた。