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THE 変人
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普通の生活-4

とは言え海斗の様子は以前と比べてだいぶ落ち着いた。大人らしからぬ言葉使いも影を潜め、素行も良くなった。働く仲間としてはその方がいいに決まってはいるが、逆に違和感を覚えてしっくりこないのは、もはや葛城海斗と言う人間のステータスが定着してしまった以上、変人は変人でいてくれた方がリズムが狂わないと言う事だ。会社では相変わらず海斗が幸代にふられたのではないかと言う噂が流れていた。

「ねぇねぇ、海斗さんと上手く行ってないの?」
「付き合ってたんでしょ?」
「仲直りしな??」
勘違いしている同僚からそう言われる度にいちいち否定するのがメンドクサくなってきた。段々イライラして来た頃に、安田が余計な一言を言ってしまう。
「やっぱりフッたんだろ?考え直してやれよ〜。」
その言い方が心配してのことではなく冷やかしっぽい言い方だった事にカチンと来た。
「だから付き合ってもないし告られてもないし、ヤッてもないですから!!」
事務所で大声を出してしまった幸代は恥ずかしくなり思わず事務所を出て行ってしまった。

「全く何なのよ!!人の気持ちも知らないで…。告白したいのはこっちの方なのに、フラれるのが怖くて言えないってゆーのに。」
自分でそう言って、ようやく自分の素直な気持ちがはっきりしたような気がする。瀬奈を心配する海斗を見て嫉妬している自分に、自分は海斗が好きなんだと気付いた。嫉妬していたのは自分も同じであった。幸代は瀬奈に嫉妬していた。しかし瀬奈を心配するのは自分も同じだった。幸代は自分の気持ちを押し殺して瀬奈の病気を快方に持って行くよう努力していたのであった。

瀬奈がいなくなり海斗に気持ちを伝え易い状況にはなった。しかし海斗の頭の中には瀬奈しかいないのは明らかだ。それにまだ自分の素直な気持ちを伝えるタイミングではない。もう少し時間が経ち、このまま瀬奈が現れなかったなら、その時には告白しようと思った。最近海斗を思うと切なくなる。胸がキュッと締め付けられる。人知れず、幸代は苦しんでいるのであった。

海斗が以前のような変人ぶりを見せなくなって一番心配しているのは幸代なのである。誰よりも気にかけ、誰よりも見つめている。そんな海斗の元気を取り戻すのは自分しかいないと思っている。海斗が瀬奈にしたように、今度は自分が海斗の為にしてあげられる事をしよう、そう思っていた。


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