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THE 変人
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普通の生活-3

「おい、どうしたんだアイツ…。最近おかしいぞ?大丈夫か??」
部長の安田が幸代に言った。
「別にいーじゃないですか。あれが普通じゃないんですか??」
「まぁ普通の社員ならあれが普通なんだが…」
安田はここ最近、海斗が真面目に仕事をこなす姿を見て本気で心配していた。いつもふざけた事や釣りの事ばかり言いながら仕事をしている海斗の方が落ち着く。パソコンに向かい黙々と仕事をする海斗は違和感がありすぎて逆に気が散るし心配になる。

「お前ら、何かあったのか??」
「はーっ??」
「喧嘩したとか、別れたとか。」
「な、何ですか!?別れたって!?だいたい付き合ってないし!」
「え?お前ら付き合ってないのか??」
「つ、付き合ってないし!!」
「そ、そうか…」
「そーゆーデマを拡散するのだけはやめて下さいよねっ!」
幸代は頬を膨らませて去って行ってしまった。
(てかあれは嫌がってんじゃなくて見透かされた照れ隠しにしか見えないけどな…。フフフ、あいつらのゴールインも近いか?♪)
安田は今のうちからスピーチでも考えておかなきゃなと思った。

幸代の心の中は今、複雑であった。自分の故郷に帰って行った幸代が心配だ。しかしその裏では海斗が心配でならない。自分が幸代を心配している何倍もの心配をしているであろうからだ。瀬奈がいなくなってから変人さが影を潜め、気持ち悪いぐらいに模範的な社員の姿を見せる海斗が心配で仕方がなかった。更なる心配は、そんな海斗を心配する自分が心配であった。海斗を心配すればする程、どうしてこんなに海斗を心配するのか考えるのが怖かった。それを自認していいのかどうか判断するのが物凄く怖かった。しかしその判断をするのはまだ今ではない、そう思い、モヤモヤした気分のまま仕事をしていた。

瀬奈がいた時であれば海斗の家に行くのも容易であった。しかし瀬奈がいなくなった今、海斗の家に行くのはなかなか勇気がいる事であった。もしかしたら海斗の行きたい口実に瀬奈を利用してたのかとも思ったが、そうではないと信じたい。そう悩む程、いつの間にか幸代は海斗を愛し始めていたのであった。

同行するのも緊張する。瀬奈の話題はしないよう心がけていた。今まで海斗と真面目に話した事がない為、今の海斗にどう話しかけたらいいのか難しい事であった。
「最近変人ぶり、見せませんね。」
海斗の様子を伺いながら言った。海斗は動揺する事なく、普通に、穏やかに答える。
「何か悪いな?色々心配させちゃってるみたいで。瀬奈の話題もしずらいだろう?」
心配してるのを知られていたと思うと少し恥ずかしくなった。しかし瀬奈の話題という腫れ物に自ら触れてくれた事で瀬奈の話題をしやすくなったのは事実だ。海斗は背伸びをしながら言った。
「あっちはあっちで頑張ってるんだ。こっちはこっちで頑張らないとな!オヤジ、心機一転、エリートサラリーマンになるかな!」
久々に明るい海斗を見て安心した。
「フフッ、今更ですか?」
「まー、無理だな!」
「ですよね♪」
「じゃあ気分転換にオッパイでも…」
「揉ませません♪」
「だよねー。ハハハ…」
変わったのは幸代も同じだったのかも知れない。海斗のセクハラをやんわりと包み込む幸代であった。


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