イケナイコト?〜すれ違う恋情〜-1
声、が。
兄さんの声が、聞こえる。
記憶の中の兄さんが、じっとあたしを見てる。
首筋から這うみたいなキスが降ってきて、兄さんの唇があたしを舐める。
気持ちイイ?って、時々意地悪みたいに聞きながら。
『濡れてるよ?薫、どうしたの?』
優しいのに意地悪な顔。
翻弄されてぞくぞくする。
『ほら、もっと脚を開いて。欲しくないのか?』
っ…ん…
『素直におねだりしないと、あげないよ?いいのかな』
あっ…ん、……っ……
『どうして欲しい?思い切り突かれたい?それともかき回すほうが好き?いっそ両方してみようか』
……い、や
『嫌?何が嫌?』
ん、……ふ、ぁっ……
『ほら、聴こえるだろう、おまえの音だよ』
い、やぁ…っ…あっ……
『そう…いい子だね』
目、を、開けた。
すぐ近くで兄さん、あたしの顔を覗き込むようにじっと見てる。
なに、いまの…夢?
「にぃ、さ……?……あっ、あん……っ……!」
おはよう、って、兄さんが笑った瞬間、体に刺激が走る。
違う。
これ、なに?夢じゃない。
指、兄さんの…入ってる?
「い……っ……ん、や、ぁ……っ!」
朦朧とする意識の中、あたしは兄さんから逃れようと、必死で身を捩った。
制服、ちゃんと着てる。
スカートもはいてる。
ただ、兄さんの、手だけが、中に…。
「……っうぁ、あ……あっ……あ、んっ」
いやだ、どうして?
体、全然動かせない。
それどころか、もがいて体を揺らすたび、あたしの中で兄さんの指が……。
「暴れると怪我をするよ。大人しくしなさい」
「…う、……っあ!」
兄さんの長い指が、あたしの中をかき回す。
ピアノとかすごく上手に弾けちゃう指が、今はあたしの身体を鳴らしている。
指、深いところまで差し込まれて、グチュグチュっていやらしい音を響かせながら、かき回しては出したり入れたり、摩擦が早くなるに連れて、お腹の底からずくずく何かが上ってきて。
「ふっ…うう、ん…んぁっ!あ、あ、あ、んんんぅ!」
ぎゅって指を締め付けながら、絶頂の淵に立たされて、あたしはそこから一気に堕ちた。
熱くて、なにもわからない。
苦しくて、呼吸を継ぐので精一杯。
虚ろに開いた視界のすみで、兄さんがあたしを見つめている。
優雅な仕草で指を拭いながら、いつもみたいに、優しく、優しく微笑んで。
兄さんのうしろに見える壁、天井も、ドアも、全部知らない。
ここ、どこ?
あたし、どうして?
「おまえ、学校で気を失ったんだよ」
「…どうして?」
「覚えてないの?」
少し哀しそうに目を細めた兄さんの眼差しに、全身がカッと熱くなる。
頭より、体が先に思い出した。
あたしの中に刻まれた兄さんの熱。
そうだ、あたし学校で…音楽室で、兄さんと…。
「あのままじゃ家に帰せなかったから、近くのホテルに部屋を取った。
おまえは友達の家に、オレは仕事で学校に、それぞれ泊まると言ってある」
言いながら、あたしが寝ているベッドのそばに腰を下ろした兄さんに、あたしは胸がどきどきするのを感じた。
そっ…か。
あたしもう、兄さんのものになったんだ…。
夢みたい。
痛くて、死んじゃいそうって思った。
思いながら、でも、ずっと兄さんのこと呼んでた。
好き、大好きって、ずっと…。
「大丈夫か?」
兄さん、指を伸ばしてあたしの髪に触れる。
そんなのにもドキドキが止まらなくて、あたしは少し顔を背けた。
「う…ん……」
起き上がろうとして力を入れた瞬間、あたしは両腕に違和感を感じて、再びベッドに吸い込まれてしまった。
そう言えばさっきも、腕、動かなかった。
首だけ傾げて目をやると、あたしの両腕、手首のところをロープで縛られて、バンザイするみたいな格好で、ベッドの両端のポールにくくりつけられている。
「なに……?」
引っ張ってみても、全然ダメ。
なにこれ、どうして?って思って、兄さんのこと見つめたら、
「おまえが逃げないようにね」
って。
いつもと同じ、優しい声で。