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THE 変人
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なぜ…-3

一方、康平の捜索は的確であった。警察に連絡し各交通機関に通達、バスや電車、空港、駅に瀬奈の顔写真を元に姿を現していないかの確認を急いだ。一度全国に捜索願を出した事もあり警察もすぐに動いた。福岡県警と康平は良好な関係を築いている。特に大きな事件もない今日は、警察も瀬奈の捜索に積極的に動いてくれた。

「まだか…まだ見つからないか…!」
焦る康平。スマホも電源が切られており繋がらない。
「こんな事になるならGPS設定をしておけば良かった…」
瀬奈が戻って来た時、いつでも瀬奈がどこにいるか分かるよう、GPS機能を設定しようと思ったが、瀬奈を信用していないようで気が引けた康平はしなかったのである。様子を見て設定するかどうか決めればいいと思っていたが、まさかこんな早くに後悔する事になろうとは思わなかった。だが設定しなかった事には後悔するが、娘を信頼したいと言う気持ちには後悔していない。逆に瀬奈に信頼を得られなかった事を後悔していた。

「瀬奈の苦しみに気付きながら瀬奈の気持ちを理解してやれなかった私の責任だ…。世間体…どうして私はそんなものを守ろうとしてしまったんだろう…。守るべきものは愛する娘だったと言うのに…」
康平の目に涙が浮かぶ。
「あなた、あまり自分を責めないで…?まず瀬奈を早く私達の元へ取り戻しましょう。また3人で暮らして、みんなで海に行って砂塗れになって笑えるような、そんな他愛のない幸せを瀬奈に思い出してもらいましょう。私達は瀬奈を愛してるって、あの子に分かってもらいましょう。」
康平は涙を拭いそう言った。
「そうだな。私はいつもあの子の笑顔に心を温められて来た。笑顔を見ても、泣く顔を見ても私の胸は熱くなった。この子の為にもっともっと頑張らなければならない、そう思って必死に働いて来た。今こそその恩返しがしたい…。瀬奈に笑顔を取り戻させてやりたい…。瀬奈…、愛しいよ…。瀬奈…」
康平のこんな弱々しい姿を見るのは初めてかも知れない。美香は涙を堪えながら康平の背中を優しく撫でるのであった。

康平の頭の中には、3歳だったか4歳だったか…、まだ幼い頃に海で砂だらけになりながら貝殻を拾い上げ、自慢げに手を上げて見せてくれた、瀬奈の屈託のない笑顔が浮かんでいたのであった。


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