他人の手-1
「では…次のニュースです…。き、今日…安田官房長官が…不適切な発言について記者会見を行いました。」
いつものようにプライム・ゼロで原稿を読む奈々。しかし今日は少し様子がおかしかった。凛とした姿勢で整然とニュースを伝えるのが評判の奈々が、この日はどこか調子が悪そうだ。視聴者もスタッフもそんな奈々を心配していた。
放送が終了した後、スタッフのADである中谷裕太が奈々に駆け寄った。
「鈴井さん、体調悪そうですが大丈夫ですか??」
うっすらと額に汗をかいているようにも見えた。
「あ、だ、大丈夫です。少し熱っぽくて…」
「そうなんですか。」
「薬飲んで少し横になれば平気なので心配しないで大丈夫です。」
「わかりました。ではお大事に…」
少しフラフラしながら歩いて行く奈々を見つめていた。
奈々はそのままトイレへ入る。そしてパンストとパンティを下ろすと、挿入していたバイブを抜き取った。
「ああん…」
ようやく異物感がなくなり便器に座り込む奈々。
「ヤバかった…。」
周りには風邪をひいているように見えただろうか…。奈々は岳斗にバイブを入れたままニュースに出ろと言われていた。開始から今までバイブを挿入したまま本番に望んでいたのであった。
「こんな事毎日させられたらまともにニュースも読めないって降板させられちゃうわ…。」
これからも岳斗は無理難題を押し付けて自分を苦しめて来るだろう。奈々はそれを考えただけでも憂鬱になった。
誤算はあった。ただハメるだけで良かったのだが、誤作動か、急にバイブが微動し始めたのであった。動かないうちは何とか耐えられていたが、急に動かしてからは普通でいる事が困難になった。もしもっと振動が大きかったならばきっと声も出てしまっただろうし、悶えていたに違いない。本番にもしイッてしまったら最悪だ。テレビ史上最悪のハプニングに間違いない。そんな痴態だけは絶対にさらす訳にはいかなかった。
そこへ狙ったかのように岳斗から電話が来た。
「良かったぞー、奈々。エロかったぞ!勃っちゃったよ。」
「もう嫌…、あんなの…。」
「お前、バイブ大好きだろ?」
「…」
「良く叫んでたじゃないか?もっと激しく!もっとぶち込んでぇ!ってさ。」
「それは…あなたを愛してたからの事で2人きりだったからでしょ!人前であんなの、絶対嫌!」
「フフフ、今の俺はお前が嫌がる事をたくさんしたいからなぁ。そんなに嫌だったか。へへへへ」
楽しそうに笑う岳斗。
「でも安心しろよ。お前がニュースを降板させられたらつまらないからな。まぁ勘弁してやるわ、生放送バイブは、な。」
「…それはどうも…。」
そう言いながらも胸を撫でおろした奈々であった。