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日常Breaker
【コメディ その他小説】

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日常Breaker2-2

「よーし。ガンバれ沙耶!上手に出来たらチューしてあげるぞ!」
「ぃよっしゃぁぁぁぁ!!!」
沙耶の目がキュピーンと光り、ダッシュで台所に飛込む。
数分後。
「お待たせしました」
制服にエプロンをつけた沙耶が姿を現す。大皿を手に、思わせぶりにゆっくりと歩き、それをテーブルに置いた。
「いろいろやって失敗した、大根の卵とじです」
「あちゃ〜…」
うるる〜っと、沙耶の目を涙が伝う。
「これが私の限界です〜」
「よしよし、よく頑張ったね。泣かないで」
彼女の頭を、優しく撫でてあげる泰久。
「じゃあ沙耶さんの意思を汲んで、次は私がなんとかするよ」
続いて、妹の華奈が名乗りをあげる。
「大丈夫か?」
「任せて。料理は創意工夫と愛情だよ」
数分後。
「大根の卵とじの卵とじ!お待たせー!」
うるる〜っ。
「実は料理苦手なの〜」
「うん。こんな展開だと予想してたよ。よしよし、泣くな」
そして、サミュエルが立ち上がった。
「自分が責任を取ります!二人の仇は、自分に任せてください」
「ふ〜ん。まあ、お願い」
数分後。
「大根の卵とじの卵とじを、卵でとじてみました」
うるる〜っ。
「すみません!やっぱり無理でした」
「やっぱりね。大丈夫、期待してないし」
泰久は、女の子二人の髪を撫でながら、大きな溜め息をついた。
「自分には慰めなしですか!?」
女の子との、あからさまな扱いの違いにショックを受けるサミュエルであった。
「よし、食材は無駄に出来ないし、みんなの努力も無駄にしたくない。主人公の俺がやろう!」
おぉ〜っ!
パチパチと拍手が起こる。三人の期待を背負い、いざ幾島泰久、推して参る!
「完成!大根の卵とじの卵とじを卵でとじたもの!……だったもの」
泰久の持つフライパンには、真っ黒な炭が山盛りになっていた。
「無念…」
「無駄になっちゃいましたね。大根と卵」
一同、大きな溜め息をつく。料理下手軍団は、結局物言わぬ大根に惨敗したのだ。これでは、霊長類の長を名乗るわけにはいかない。
「あ、そうだ。先輩、『お約束』ですよ」
「え?」
突然、沙耶が閃いた。泰久は、思わずすっとんきょうな声をあげる。
「料理上手な、幼馴染みのドジッ子です」
「あ〜、よくマンガとかにいるね。それが何?」
「その人がこの世に存在すれば、美味しいご飯にありつけて、さらに人間の尊厳も取り返せますよ」
「あのね、俺にはそういう幼馴染みは…」
いや…待て。
泰久は、ついさっき似たような発言をした。あるまげ丼で…。
「あ!」
思わず、華奈に目をやる。そう。ほんの一時間程前まで、華奈は存在しなかった。泰久の身辺関係を無理矢理お約束の展開にするために登場した、『新キャラ』である。
もしかしたら、彼女と同じように幼馴染みが出現するかもしれない。


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