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日常Breaker
【コメディ その他小説】

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日常Breaker3-3

「ち、違いますよ!自分はあやしい者では…」
サミュエルは廊下で、河合さんの悲鳴で集まったギャラリーに囲まれていた。
「自分は、何の変哲もない野良ボディービルダー…」
「うををを!河合さんを離せぇ!」
復活した村上が、男らしくサミュエルに突っ込む。だが、実際にはサミュエルは河合さんを捕まえているわけではない。
「河合さんとは、誰ですか?」
サミュエルは、手に一つの包みを持っている。実は、これは泰久が忘れた弁当だ。暇なので、わざわざ届けに来たのである。
しかし、河合さんで頭がいっぱいの村上は…。
「か、河合さんが!?河合さんが弁当にされてしまった!この人食いマッスルめー!」
村上の叫びに、真っ昼間からサミュエルを見たショックで混乱している河合さんが反応する。
「え、私が食べられるって?」
「そうだよ、河合さん!そのマッスルが河合さんを河合さん弁当にして、後でゆっくり食べる気なんだ」
「あー!お弁当になってしまった私、なんて可哀想なの!」
「大丈夫だよ、河合さん!いま、僕が助ける!」
「助けて村上くん!」
「うををを!河合さんの応援で勇気百億倍だぁ!くらえ、河合さんを救う愛とラブとジュテームの必殺奥義!村上エキセントリック・ボンバー・パーンチ!」
名前負けの普通のパンチが、サミュエルのボディに炸裂した。
ボギャ
「こ、拳が〜!」
鍛えぬかれた肉体を不用心に殴った村上の拳が、ヤバい音を立てる。
「だ、大丈夫ですか?」
「ぐおお〜。こいつ、なんというモンスターだ」
右手を押さえる村上は、半泣きになりながらも次の攻撃に移ろうとしている。
「あの、もう辞めた方が…」
「隙あり!村上ダイナマイツ・ハード・キーック」
名前負けのキックが、サミュエルの頭部をとらえるが…。
ペキョ
「足が〜!」
懲りない村上は、廊下をゴロゴロとのたうつ。
一切の攻撃はきいていないが、サミュエルの立場は悪化していった。仮にも、生徒を負傷させたのだから。
「なんということだ!?」
さらに状況は悪化し、追跡していたケン先生が追い付き、姿を現す。とりあえず、どんな言い訳をしようともサミュエルは助かりそうにもない。
「暴漢め!退治てくれる」
燃える熱血ティーチャーは、メガネのフレームに仕込まれたボタンをカチカチと押し、メガネのガラス部分の表示を『日常生活(ノーマル)モード』から『戦闘(スカウター)モード』へ切り換えた。
ケンの右目のガラスに、サミュエルのデータが映される。
「パワーが花マルでスピードとタフネスが三つ星。肉体美ポイントはシュワちゃんレベルで、スキンヘッドランクはトリプルA。総合戦闘能力値は…サ〇エさんの十八倍か」
やたら大雑把な分析を終了し、ケンは構えをとる。
「相手にとって不足はない。さあ、かかってこい」
「!?」
サミュエルは戦慄した。彼の構えを見ただけで、その強さを理解したからだ。
「コホォォォ…」
息を吐き、サミュエルも構えをとる。記憶のないサミュエルが自然にとった構え…鳥肌が粟立ち、熱いものが体の奥底から吹き上がる。
…自分は…何者?
サミュエルは、頭のすみに疑問を抱く。
その光景は、防犯対策として設置された監視カメラを通し、理事長室に写し出されていた。
「…見つけたぞ。このスキンヘッドにウェディングドレス…奴に間違いない」
そう言葉をもらし、理事長はほくそ笑んで、部屋を出ていった。

「シリアスだ…」
どうにも出番が回ってこない泰久は、生唾を飲み込み冷や汗を流した。
「珍しいパターンだね」
朝香は頷き、なれない真面目な空間に耐えられず、溜め息をもらす。
「次回に続くぜ」
そしてダイコンがしめた。


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