未来・谷山萌・谷山葵-9
何やら重苦しい窮屈さに眼を覚ますと、俺同様の裸んぼうで淫臭ムンムンのままに折り重なって寝息を立てている未来がいた。
身じろぎしたのが未来の眠りを破ったようだった。
「んんっ……おはよ……」
窓の外はすっかり暗くなって、晩飯時か夜中かは定かでないが、間違いないのは未来の寝言めいた呟きが正しくないことだ。
「それを言うなら『おそよう』だな」
俺はクスッとしながら未来の髪を撫でた。
「あのクソビッチ母娘はどこ?」
「後は水入らずでどうぞって、帰った」
「柄にもなく気の利いたこと抜かしやがって」
俺は苦笑した。
実際、気が利いていた。
まどろむ中で俺が見た夢──死ぬ寸前に最後の一発をと選んだ女は、やっぱり未来だったのだ。
半身を俺の上に預け、柔らかい乳房越しに鼓動を伝える未来を降ろし、横抱きにした。
「凄かっただろ、葵のイカれっぷり」
「うん。さすが萌ちゃんのママだね。年齢と共に性欲強くなるって本当なのかな。わたしもアラフォーになる頃には、あんな感じでマジキチババアとか呼ばれてイキ狂うようになるのかなぁ……」
「未来は既に立派なマジキチビッチだけどな」
「あん、意地悪ぅ」
未来は拗ねて俺の乳首をキュッとつねった。
「……でも、すっごく興奮しちゃった。亮介がエッチしてきた人と一緒になって盛り上がって、乱れまくって……」
「楽しんだ?」
「わたし変なのかな。普通にエッチするより何倍も何十倍も興奮して燃えちゃった気がするの」
「そうかそうか。未来は乱交大好き人間に進化しちまったんだな」
「べっ、別にそういうんじゃないよぉ……」
「いいと思うよ。エロければエロいほど未来のこと魅力的に感じるから」
俺は腕に力を込め、未来を強く引き寄せた。
「あっ……ん、これ……こうやって亮介と二人きりで、ぎゅっとされるのが一番気持ちよくて幸せ……」
「ほんと?」
にっこり微笑んで頷く未来を見ていると、オーガズムとかいったものとは別次元の充足感が満ちる。
股間はギンギンと勃起してきているのだが、敢えてそいつを用いようという気にならず、俺は暗がりの中でずっと未来と見つめ合っていた。
〜了〜