バニラプリン‐前編‐-3
「お嬢ちゃんが欲しいのはこれじゃろ」
その声で我に返ったあたしはメールに書いてあった通り、2万円を渡し、?バニラプリン?なるものを10本受け取った。
そのとき老婆はそれまでとは違った低い声でこんな事を言っていた。
「一日に一本だけ飲むがよい。よいか?一本だけじゃぞ。それを守れない者に売る事は出来ん」
あたしは虹色の水の事で頭がいっぱいだったため、あまり聞く耳を持たず適当に頷いておいた。
「もし、飲んでから12時間経過しても効果が現れなければ、またここに来るがよい。倍額にして返してやるわい」
あたしは瓶を割らないように慎重に自宅まで運んだ。
一本200?くらいの容量だったが10本あったので流石に重かった。
段ボール箱に入れてもらったので両手で抱えるしかなく、腰の負担が大きかった。
そのことに苛立ちながら自宅に着く頃には空が赤くなっていた。
あたしは夕飯前にそれを飲んだ。
商品名の意味に少しだけ納得出来た。
蓋を開けた瞬間に強いバニラの香りが漂ってきたからだ。
その液体はドロドロしていてあまり喉越しがよくなかった。
でも、プリンのような味がしたのは確かだ。
この時点でもあたしはまだ信じていなかった。
たった半日でキレイになれる筈がないと。
あたしは特別カワイイでもなかったがブサイクでもなかった。
もしキレイになれるなら比較的高い位置に分類される女になるだろう。
いずれにしても明日になれば証明される。
そんな効果が存在しない事が。
所詮デマカセだったのだと。
─そして次の日、あたしは我が目を疑った。
起床して手鏡を覗いたその刹那、自身が震えているのを感じた。
夢オチは許されなかった。