バニラプリン‐前編‐-2
──翌日
7限目の授業が終わったので、あたしは少しワクワクしながら商店街に向かった。
もちろん一人で。
商店街に着くなり、メールに書いてあった通りに茶色の露店を探した。
すると、露店がいくつかある中にそれらしきものを見つけた。
内心おそるおそる近寄ってみると、そこには老婆が一人座っていた。
その顔に深く刻まれた皺から察すると、80代いや90代だろうか、それとも…。
老婆の目の前には商品らしきものが陳列されていた。
どれも細長い瓶だった。
それらはどうやら飲料のようだ。
だが、メールに書かれていたバニラプリンのようなものは何処にも見当たらない。
(あれ?おかしいな…。確かにバニラプリンって)
そんな事を考えているとついに老婆が声を掛けてきた。
「何か用かね?お嬢ちゃん」
どこかしらニヤニヤしている気がしたが、そこは深く考えない事にした。
「あの…その…?バニラプリン?欲しいんですけど」
「全部そうじゃよ」
「こ、これ全部ですか?」
(どう見ても飲み物じゃないの)
それでも瓶の中の液体は確かにプリンの色だった。
しばらく眺めていると、奥の方にも瓶が2本置いてあった。
その2本だけ、他のものとは隔離して置かれていたので、気になったあたしは尋ねてみた。
「あれもバニラプリンですか?」
あたしが何を指しているか理解するや否や、老婆はそれを慌てて手で隠すように言った。
「これは売り物ではない」
結局その2本の瓶は老婆によって片付けられた。
あたしは今どんな顔をしているのだろう?
口がポカンと開いたままかもしれない。
瞬きもせず、目が丸くなっているに違いない。
先ほど老婆が手で隠すよりも早く、あたしの両目はあの瓶の中身をしっかり捉えていた。
─虹色の液体を。
あれは太陽光が反射して虹色に見えたのではなかった。
確かにあの液体自身が七色の光を放っていたのだ。
まるでオーラを帯びた魔法のアイテムのように。