史上最低 3−C-2
「仲が悪い?同じ学校の先生なのにか?」
健の分析は、相変わらず的外れだった。
「お前、どんな判断基準、持ってるんだよ。」
ジュンコが再び突っ込みを入れる。
「実は、大泉田は、家では女房に頭が上がらないらしい。その女房ってのが、副担任の松先生にそっくりなんだ。」
どこで調べたのか、身内にしかわからない情報を菅田が提供していく。
「で?」
まるでピンとこない健がまた口をはさんだ。
「だから、松先生に頼んで、大泉田を説得してもらう。」
分析の割には説得力位のない結論を菅田が提起した。「そっくりさん、使って騙すってこと?」
ずっと黙っていた旬がようやく口を開いた。
「なるほど。」
お暇中の倫也が、これまたまたようやく口を開いた。
「それをみんなでモニタリング?」
心底そう信じているであろう健を、ジュンコの平手打ちが襲う。
「で、勝算は?」
健が真顔で将暉に聞いた。
「高3だぜ。俺たち。」
鈴の、かるたで鍛えた張り手が流星の頬を直撃した。
愛依の畳みかける長台詞が追い打ちをかけ、
ジュンコがトドメのにらみを利かせた。
「ゲームは、やってみなきゃわかんねえ。」
菅田が決意を込めていった。
「ノーサイドまで、戦い抜くってことか。」
健が再び本気を取り戻していった。
それはまるで、いろいろな仕事を転々としていた男が、例えば、ようやく、父親のパン屋を再建するという生きがいにたどり着いたかのような真剣なまなざしだった。
「そゆこと。」
決断したとの将暉の顔には、晴れ晴れとしたものがあった。
「じゃ、いっちょ、やってみますか。」
お暇に終止符を打つ覚悟で、倫也が言った。
「やってやろうじゃないのさ。」
同じく、お暇をやめる決心がついた華が言った。
そんなわけで俺たちは、副担任の松先生をターゲットに絞り、最後の学園祭参加に向けてのスタートを切ったのだった。