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Lovem@le
【純愛 恋愛小説】

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Lovem@le-1

どんなに控えめな表現をしても、僕が最低の人間だということに変わりはない。誰かが、この話をきけば、おそらく、いや確実に僕のことを最低だと責めるだろう。そんなの、あまりにも勝手だ、と。僕もそう思う。だけど同時にこうも考える。僕を責める人間は、口々に、あるいは視線で責め立てる一方で、多分、僕の気持ちも分かってくれているものだと。もちろん、だから僕に対する評価がどうにかなるわけでもないのだけれど。
僕には彼女がいる。
こんなことを言っては周りからのろけるなとうんざりされそうだが、彼氏としてのひいき目なしで、なかなかの美人なんじゃないだろうかと思う。くっきりした二重のまぶたと長い睫に縁取られた瞳が、彼女、ケイミのチャームポイントだ。顔もスタイルもいい。好みの問題を除けば、外見は文句のつけようがない。それなら性格はどうかときかれたら、これもやっぱり申し分ない。明るいし、優しいし、何と言っても恋愛に対してものすごく一途な所が、ケイミにべたぼれの僕にとっては最大の長所だと思う。
そう。僕は心底ケイミに惚れていた。
特別秀でたとりえがある訳でもない僕に、一身に愛情を注いでくれるケイミ。その存在は、決して失ってはならない、臭い言い方を選ぶなら、僕の命そのものだった。
彼女がいなくなったら、もう僕の存在を肯定してくれる人がいなくなってしまう。
きっと次の瞬間からの僕は、彼女と出会うまでの僕を思い出すことも出来ず、時と共に風化してしまう。本気でそう思っていた。
なのに……。
僕は今、ケイミを失いかけている。
いや、まだ何とかなると思って起死回生を狙っているのは僕だけで、ひょっとすると既に失ってしまっているのかもしれない。
ケイミのいない人生。
考えた瞬間、見えない万力に心臓をぎりぎりと圧迫されている気がして、僕はベッドの上で、頭を抱えながら悶えた。そんなのいやだ。彼女を失いたくない。ああ、僕はなんて事をしてしまったのだろう。どうして、あんなことをしてしまったのだろう。どうして。どうして、あいつを突き放してしまったのだろう。後悔に、溺れそうだった。
「ついてくんなよ」
下校途中の事だ。
僕はついに耐え切れなくなって、ケイミに言った。僕の様子がおかしかったことは、少し前から気づいていたのだろう。ご主人の顔色をうかがう子犬のように、僕の後をとぼとぼとついてきていた彼女は、僕と目が合うなり足を止めた。ある程度予想していたのだろうけれど、それでもケイミはとても傷ついた表情を作った。僕ら二人を、同じ高校の奴らが次々と通り過ぎて行く。中には、あからさまにこっちを見て笑って行く奴もいた。
僕は周囲からなるべく意識を遠ざけながら、ケイミをじっと睨んだ。彼女は授業道具の入った鞄を胸に抱き、僕と向かい合って立っていた。顔はうつむきかけていたけれど、瞳は真っすぐ僕へ向いている。一文字に結ばれた唇は、かすかに震えている気がした。
左手には、僕の背丈ほどある金網が道に沿って張られていた。その下には川が流れているため、風が吹く度にそれが水面の冷たさを拾い、なめるように僕の頬にあたっていった。さすが秋の夕暮れだ。あっと言う間に全身に鳥肌が立った。
「怒ってるの?」
今にも風にかき消されそうな声で、とうとうケイミが言った。
「シン、私……」
「そんなにあいつがいいかよ」
彼女の言葉を遮って、僕は言った。
「いつもいつもべったりしやがって」
ケイミが一瞬、表情をこわばらせる。僕はそのささいな変化に、余計にいらだちを覚えた。そして気が付いた時には、次から次へとナイフのような暴言を彼女に向かって突き立てていた。お前はあいつが好きなんだろう。そりゃそうだろうさ。あいつは俺よりもずっといい男だし話も会う。あれだけしっかりしていたら同じ十七とは思えないよな。ああ、別にこっちに気を使わなくたっていいぜ。否定なんかすんなよ。あれだけ楽しそうに笑って肩でもたたき合って、じゃれあってさ。美人なお前とならお似合いだよ。ああ、そうさ。どこにでもいる平凡な高校生の俺なんかと付き合っているよりも、あっちと一緒にいたほうがしっくりくるってもんだぜ。そうだろ?ちょうど向こうもケイミに気があるみたいだしさ、このさいどうだよ。乗り換えてみたら。


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