第1章 宣言-1
「俺は中村さんとセックスがしたい!」
年の暮れの忘年会でビールで酔った岸田隆文は、本人、中村涼子の目の前で顔を合わせながらそう宣言した。
「な、何言ってるのー!もぅ…」
そんな露骨に言ってくるとは思わなかった涼子はびっくりしながら笑った。
「いやいや、だから俺は、中村さんとセックスがしたい!」
「や、ヤダぁ、もう、恥ずかしいじゃない〜」
手で顔を仰ぎ熱を冷ます仕草を見せる。
「変なこと言うから熱くなっちゃったじゃない〜」
周りからも囃し立てられ恥ずかしくて仕方がなかった。
隆文からは以前から美人だ、綺麗だ、と褒められたり、冗談交じりにエッチだと言われてはいた。半年前に転勤してきた隆文だが、さっぱりした性格と嫌味のない性格で打ち解けるのは早かった。容姿も悪くなく若い女子社員からは人気がある。しかし若くて可愛い女子社員がたくさんいるにも関わらず、隆文は中村涼子の事を気に入っているようだ。だからと言ってネチネチしつこく絡んで来る訳でも誘って来る訳でもない。若い子と比べて41歳の隆文と歳が近いせいか、37歳の涼子とは普段から良く会話をしていた。
だがそんならあからさまな事を言われたのは初めてであった。目の前でセックスがしたいと言われ平気でいられる女などいない。涼子は動揺したが、酒の勢いで出た言葉だと思い冗談だと受け止めていた。
「じゃあこの後、セックスしよっか?」
目をキラキラさせながらそう言ってくる隆文。
「しないよー!アハハ!帰るし〜」
「じゃあ送ってくよ!」
「大丈夫大丈夫!優子ちゃんに送ってもらうから♪」
「優子〜!邪魔すんなー!」
「アハハ!岸田さん、軽く拒否られてますよ?空気読め♪」
「あ??優子、お前…ケツ触るぞー!?」
「あ、セクハラ!!」
「まじでケツ触るかんなー!!」
「きゃあ♪」
そんな感じでワイワイと忘年会を楽しんでいた。
周りを見渡しても中村涼子よりも若くて可愛い子、いい体をした子はたくさんいる。だが隆文はどうしても涼子が気になってしまうのだ。冗談っぽく言ってはいるが、実際涼子とヤリたくて仕方がない。40歳を超え、さすがき若い時に比べると性欲も落ちついた。しかし中学生の頃、保健室の女の先生に抑えきれないような性欲を抱いた時のような、そんな感覚を涼子に抱いているのであった。
「私がヤラせてあげましょうかぁ〜?」
事務員の南原理央が隆文に言った。しかし隆文はキッパリと言った。
「俺は中村さんとセックスがしたい!!」
と。
涼子はやはり手で顔を仰ぎ熱を冷ますような仕草を見せ苦笑いしていた。