7月:予期せぬこと-5
その後、何回かの休憩をはさんで演奏を聴き
結局最後の演奏が終わるまで私たちは演奏を聴いていた。
「楽しかった〜」
前を歩く青木と葵は仲がよさそうでほほえましい。
きっとこのまま青木は葵の部屋に泊りに行くんだろう。
「私、地下鉄で帰るね!」
前を歩く2人に声をかけると
「送っていくよ」
秋田さんがそっと耳元で囁く。
「え。大丈夫です。音楽を聴くのに夢中でそんなに飲んでないし」
「今日は俺もお気に入りのバンドで気分が良いから。送らせてよ」
「送ってもらえ―」
1番テンションの高い青木が葵の肩を抱きながら振り向いた。
「でも」
「いいじゃん。楽しかったんだから。そのまま今日の話をしながら帰って余韻に浸りな」
少し顔を傾けて秋田さんを見上げれば
「送るだけ」
そう言って苦笑いをしてる。
別に、変な心配をしている訳じゃないけど。
「秋田さん良い男だぞー。ずっと会えないオトコなんかより」
思わずそう言った青木の脇腹に葵がエルボーをくらわした。
その一言に気まずくなる前に葵が青木を引っ張って
「じゃぁね!」
とその場から帰って行った。