片山未来(25)・谷山萌(18)そして尾野上冴(45)-9
「格好いいじゃない。潔く全部自分が悪いなんて言っちゃって」
「だって、そうだろ」
妙に寒々しい空気の中、俺は煙草をくゆらせた。
「実はあたしが一番悪いんだけどね」
膝小僧を抱え、萌はポツッと呟いた。
「んなことねえよ」
「ううん。あたし、亮介を騙したの」
「は? それどういう意味だよ」
心持ち眼を潤ませ、萌は白状し始めた。
俺と萌はヤッていなかった。
昨夜の乱交でクタクタになっていた萌は、俺との鍋&晩酌(未成年のくせに)ですっかり癒され、酔い潰れた俺を抱き枕代わりにスヤスヤと安眠したという。
朝方、先に眼を覚ました萌が見たものは、宿酔いの熟睡で死んだようになっている俺だった。
しかし朝勃ちはギンギンで、それを見た萌は悪戯心から俺のズボンとパンツをひん剥いておしゃぶりを始めた。
そこに鳴り響く俺の携帯着信音。それでも俺は眼を覚まさなかった。
画面には未来の名が出ているのを、萌は見た。
これもまた悪戯心だったのだろう、電話を受けて黙っていると、未来の弾んだ声が「今着いたよ!」と告げた。コインパに車を入れて掛けてきたのだろう。
──未来と約束してた。
──鍋に使った食材も、そのためのもの。
女の勘でそうと察した萌は、さらに悪質な悪戯をお膳立てしたのだ。
口コキで睡眠中の俺から精を搾り取り、自身も下を脱ぎ去って、さも「事後」であるように偽装をほどこし、未来を出迎えたという訳だった。
「何でそんな真似するんだよ……」
驚愕の(?)真相を明かされ、俺は唖然とするしかなかった。
「つーか、電話にもお前のフェラにも気づかず爆睡してた俺も俺だよな……」
「寝ながらイッてる亮介、可愛かった」
「そいつはどうも。お前の狙い通り修羅場展開になって俺と未来とは断絶まっしぐら、か。満足か?」
「亮介はそれでいいの?」
萌は燃えるような眼で俺を見つめた。自分から仕掛けておきながら、泣き出しそうな面をしてやがる。
未来をまんまと出し抜いてやったとの心理でいるかと思いきや、罪悪感が勝っているというのか。女心は不可解だ。
「あんまりよくない。けど俺も一人の女に操みたいなの立てられる柄じゃないから、弁解する筋合いなさそうだもんな」
「格好つけないでよ」
「いや、やっぱ気にかかるな」
俺は煙草を揉み消した。
「あいつ俺の子孕んでるっぽいし」
その一言に萌の顔色が変わった。