陵辱と欲情の夜-4
何が起こったのか、うまく理解できない。
視界がぐるりと回転し、目に映るのは見たこともないほど冷徹な表情の史規だけになっていた。
頭の上で捕まれた両手首と、固い床板に押し付けられた背中がひどく痛む。
腰の上にのしかかってくる史規は、華奢な見た目よりもずいぶん重く感じられた。
片手で押さえられているだけの手首でさえ、アイの力ではとても自由にならない。
「おじさま、やめて、痛い……」
「アイちゃんはいつもワガママばかりだね、僕の気も知らないで。おばさんたちが甘やかすから、いつまでたっても悪い子のままなんだ」
史規が冷ややかに笑う。
いつもの優しい彼とはまるで別人のようで、なんだか背中の辺りが寒くなった。
「な、なんでそんなこと言うの? ねえ、離して」
「少しは我慢することを覚えたほうがいい。僕は今日までずっと我慢してきたんだよ、それなのに君は」
史規の言葉が途切れた。
代わりに、彼の唇がアイの白い首筋へと下りてくる。
顎のすぐ下から、耳の横をまわって鎖骨の窪みまでゆっくりと口付けられていく。
柔らかな感触がくすぐったくて、アイは思わず顔を背けた。
「や、やだ」
「君はまるでお菓子みたいだね、子供の頃から変わらない。いつも同じ甘い匂いをふりまいて、食べてしまいたくなる」
「も、もう、子供じゃ……あっ!」
片方の乳房を爪を立てた手で鷲掴みにされ、もう片方の胸の先を口の中に含まれていく。
敏感な箇所を温かな粘膜に包み込まれていく初めての感覚に酔いしれる間もなく、丸く突き出た乳首の先に歯を立てられた。
皮膚がちぎれてしまいそうなほどの激痛が走る。
小さな胸を揉みしだく指先にも暴力的な力が加わっていく。
あまりの恥ずかしさと痛みに、アイは自分でも情けなくなるような泣き声をあげた。
「やだあ、やめてよおっ! 痛いっ、いやっ!」
「望んだのは君だろう? 僕の目の前で裸になって、このいやらしい体で僕を誘ったんだ」
ワガママでいやらしい女。
もう許せない。
僕がこの手で躾をしてあげるよ。
史規は冷たく微笑んだまま、アイの乳頭をきつくしゃぶりたて、もう片方の乳首も加減のない力で捻りあげていく。
手首を掴んでいた手が離され、肋骨の浮き出た脇腹から腰のくびれを楽しむような手つきで撫で回された。
彼の動きひとつに、アイの体はびくんびくんと腰を震わせて応えた。
怖い、痛い。
けれども、それとは別のこそばゆいような感覚が肌の下から湧いてくる。
じくん、と両脚の間が熱く疼いた。
未知の感覚に押し流されてしまいそうな恐怖を感じる。
もう両手は解放されているのに、全身がじんじんと痺れて思うように動けない。
わたしが悪いの?
ワガママを言ったから?
だから罰を受けているの?
涙だけがぽろぽろと目尻からこぼれ落ちていく。
「もうっ……あ、謝るからぁっ! わ、ワガママ、言わないから」
「信じられないなあ、アイちゃんは嘘つきだからね。そうやって謝っても、どうせ口先だけなんだろう?」
「ち、違う、ほんとに」
「嫌がるふりなんてしなくていいんだよ。こんなに乳首びんびんに勃起させて悦んでいるくせに」
「そんな……あ、あんっ……」
思わず恥ずかしい声が漏れた。
史規の言葉通り尖りきった乳首の先を甘噛みされながら、べちゃべちゃと舐められていく。
骨まで溶けてしまいそうなほど甘やかな刺激が、胸の先から脊髄へと流れ込んでくる。
体温が上がり、あちらこちらから汗が滴り落ちていく。
悪性の感冒に犯されたような熱に、脳がうまく働かなくなってくる。
感じたくはないのだけれど、心のどこかでこの状況を楽しんでいる自分がいる。
ねだるように腰がくねってしまうのを止められない。
史規の冷たい笑いが深くなる。
「処女のくせに自分から腰を振るなんて信じられないな。それとも、僕が知らないだけでほかの男ともう寝たのか?」
「そんなこと、してな……あっ、やっ」
ふいに下半身が浮き上がる。
強引に左右の太ももの間を押し開かれ、両足を肩の上に抱えあげられた。
カッ、と顔が熱くなる。
一番隠しておきたいあの場所を史規に見られているのかと思うと、消えてしまいたいような気持ちになった。
「そ、そんなところ、やだ……ねえ、言うこときくから、謝るから」
「暴れちゃだめだよ、良い子にして。ほら、もうビショビショに濡れてるじゃないか」
愛液の滴る股間に指を這わせながら、史規が蔑むような視線を向けてくる。
指の腹が粘膜に擦れるたび、ぐちゅ、ぐちゅ、と粘着音が鳴った。
なんていやらしい女なんだ。
そう言われているようでいたたまれない。
割れ目の筋を行ったり来たりしていた指先が、ぐうっ、と陰唇の裂け目を押し広げていく。
見られたくない、と思えば思うほど、史規の視線を強く感じる。
どうしよう、汚いところ見られちゃってる。
こんなことになるなら、きちんとシャワーを浴びてから来ればよかった。
下着だってもっと新しいのがあったのに。
そんな場合ではないのに、くだらないことばかりが気になってしまう。
指はまだ誰も受け入れたことのない膣穴の周囲をほぐしながら、ゆっくりと内部へ潜り込もうとして来る。
「アイちゃんのここは綺麗なピンク色だね、僕が想像していた通りだよ……いやらしい汁に濡れてヌルヌルしてる」
「そ、想像……? あ、あっ」
耐えられないほどの異物感。
下半身が小刻みに震え出す。
史規が嬉しそうに目を細めた。
「すごく狭いな、本当にまだ処女なんだね。頭の中ではもう何度も君を犯してきたけど、まさか本当に初めての相手になれるとは思わなかったな」