金縛り-4
驚きが恐怖心を上回り、不意に眼を開けるも、やはり天井以外何も映らない。
だが、あのやけにリアルな感覚は紛れもなくキスのそれであり、泉の頭の中は真っ白になっていた。
この部屋には自分しかいないはずなのに……。
するとまた、頬を撫でる感覚。
驚きで悲鳴をあげたつもりが金縛りのせいなのか、その悲鳴は泉の頭の中だけに響く。
(……何か、いる……?)
そう思ってしまうと、目から涙が滲んでくる。
為すすべない状況と、押し潰されそうな恐怖に、泉は静かに涙を流すことしかできなかった。
「何か」が頬を撫でたかと思うと、再びキスの感覚。
その「何か」は泉とのキスに夢中になっているのか、何度も何度も泉の唇をついばむように軽く吸い上げていった。
「……っっ」
見えない「何か」は、しばし泉とのキスを堪能したかと思うと、今度は唇を首筋にあててきた。
ゆっくりゆっくり、耳の下からうなじへと唇が移動する。
むずがゆい感覚に、眉間にシワが寄る。
かろうじてそれくらいなら動かせることに気付いたものの、泉にはどうでもよかった。
くすぐったがりの泉にとって首は弱点なのである。
身体を動かしたくとも動かせない。それなのに弱点の首筋を丹念に這う唇の感覚に、鳥肌だけが立つ。
この「何か」は、明らかに泉に淫らなことをしようとしていた。