金縛り-3
(……今の、何?)
大きな手のひらが、泉の左の頬を撫でた感覚。
だが、目を開けても見慣れた天井があるだけ。コチコチと掛け時計の秒針の音だけがやけに響く。
エアコンをつけられないまま金縛りにあったので、この部屋は暑いはずなのに、泉の全身は鳥肌がブワッと広がっていた。
(とにかく、この状態をなんとかしないと!!)
そう思うも、やはり石のように固まったままの身体。かろうじて動かせるのは眼球のみとなんとも心許ない状態だ。
初めて経験した金縛りに、泉は恐怖を感じずにはいられない。
あんなに信じなかったオカルト現象も、もしかしてあるのでは、と嫌な予感がし始めた。
この視界の端に、誰かが現れたら?
身体に誰かが乗ってきたら?
首を絞められたら……?
泉はあまりの恐ろしさにギュッと目を閉じた、その瞬間だった。
(……っ!!)
唇に柔らかな圧迫感。しかもわずかに上唇にチクチクする感覚が。
多分それは、男性のヒゲのような感触。
最近こそご無沙汰であったが、これは紛れもなくキスの感覚であった。