他人に悶える妻が…1-1
加治田さんのワンボックスに隠れた瞬間、里美が表れました。
見られてはいないかと、一瞬ヒヤリとしましたが、気づかなかったようです。
加治田さんは、何と気のきく方なのか…。
ブルーシートに小さく穴を開けてくれていました。
これで覗くことができます。
加治田「さ、車に乗って下さい。」
里美「はい。宜しくお願いします。失礼します。」
里美が助手席に座り、加治田さんが運転席に座りました。
加治田「正直、今日は何も考えていません。今回は行き当たりばったりです。何処か行きたい場所はありますか?」
里美「それも面白そうですね。何処がいいかなぁ?加治田さんは?」
加治田「私ですか?私ならラブホテルですね。アハハ」
里美の顔が一瞬マジになったのを見逃しませんでした。
それでも、明るく答えます。
里美「もう!そうなんですか?それじゃぁ…。そうしますか?」
えーーーっ!!!マジで??
冗談で、あってくれよ。
加治田「はいはい。冗談ですね。」
里美「やっぱりわかりました?私、下手なんですよね。こういう冗談。」
加治田「そうみたいですね。」
里美「それなら、○○○○水族館に行きませんか?まだ、行ってなくて…。」
加治田「わかりました。ラブホテルはその後ですね。」
加治田さんは、真面目とも冗談ともとれる、怪しい言い方をしました。
里美「そうですね。はい。ハハハ」
二人は和やかな雰囲気の中で出発しました。
加治田「今日は旦那さんは?」
里美「はい。今日は遠方まで行ってます。帰りは明日の10時だと言ってました。」
加治田「そうなんですか?それじゃぁ…。」
加治田さんは意味ありげに、言葉を飲み込みます。
上手いなぁ。もって行き方が本当に上手い。
里美が一瞬固まりましたが、返事はしません…。
加治田「あっ!ラブホテル!入りたいよなぁ。」
里美「もう。またーー!」
加治田「やっぱりダメか。残念です。アハハハ」
里美「はい。機会があれば…。ですね…。ハハッ!」
笑ってはいますが、これも、意味ありげな答えです。
本当は入りたいくせに、プライドが許さないのだと思います。
そうさせているのは私です。
多分。加治田さんが、強引な誘い方をすれば、許す気がします。
加治田「本当に…?それは本当ですか?」
里美「えっ!何が?ですか?」
加治田「何かって…。ラブホテルです。」
里美の返事に呆気にとられた加治田さん。
里美は自分の返事に、自分が恥ずかしくて、そう答えた様に見えました。
顔が真っ赤です。
里美「えっ!はい。」
里美は、私には聞こえない程度の声で、答えたみたいです。
加治田「本当に?あのう…。今からでも?」
里美は恥ずかしそうに、小さく頷きました。
加治田「やったーー!!マジやったーー!!」
加治田さんは、ハンドルから手を離して、大喜びしています。
渋いのに、この無邪気さで、女性が堕ちるんだな…。
きっと…。
勉強になります。
加治田「アハハ。とりあえず、水族館ですね。」
流石に紳士です。
若者のように、焦ってラブホに直行はしません。
今度は里美が呆気にとられた表情をしています。
多分。心の中では、大人だな。紳士で、カッコいいな。
みたいに、惚れ直しているはずです。
世間話をドキドキしながら聞いている私は、バカみたいに思えて来ました。
正直、私としてはラブホに直行してほしかったです。
そんな事を思っていたら、水族館に到着しました。
平日なので、お客が少ない。
後を追って、見つかる事がないか心配です。
加治田さんから、合鍵を預かっていたので、鍵をかけてソッと後を追いました。
加治田「流石に平日。少ないですね。これはユックリ回れそうですね。」
里美「本当に少ないですね。」
二人は寄り添って歩いています。
後をつけている私は、ただの変質者です。
里美「あの〜。うっ!腕を組んでも…。」
加治田「はい。嬉しいです。」
里美「私達って、他の人から見たら、どんな関係に見えるんでしょうか?」
加治田「多分。不倫か、年の離れた夫婦でしょうね。」
里美「やっぱり不倫相手ですよね。アハハ」
加治田「別に気にしません。」
里美「そうですね。楽しみましょう。」
加治田がチケットを買って、里美に渡し、二人仲良く入って行きます。
私はバカバカしくなって、車に戻りました。
これからの事を考えると、心臓の鼓動が高鳴って仕方ありません。
股間が熱くなります。
でも、硬くはなりません。
さ、どうしようかな〜?
すると、加治田さんからメールが来ました。
「もうすぐ戻ります。」
やけに早いな。食事にでも行くのかな?
それとも、里美が求めたのか?
益々鼓動が動きを速めました。
二人は腕を組んだまま、戻って来ました。
特に里美はウキウキで、加治田さんの腕にしがみついています。
いくら人妻でも、やっぱり女は捨てられないのでしょうね。
二人は車に乗り込みました。
加治田「どうでした?水族館?。」
里美「加治田さんと一緒だったから、楽しかったです。」
加治田「本当に?嬉しいなぁ。それじゃぁ食事にいきますか?」
里美「はい。」
里美の表情が、別人の様な明るさと、妖艶さを醸し出しています。
刻々と、その時が近付いて来ます。