あなたは皆と‥‥。(2)-3
試合に途中参加だから敵わない、のではない。最初から、戦うだけムダといえる
紅香の制服をネットで調べた折、ついでにこのゲームについて語る掲示板をあなたは見つけていたのだが、そこで延々と、また怨々と、このマッチングの問題が語られていた。
(こんなの、ひとりで勝てるわけがない‥‥。戦いにならず、養分にされるだけだ――)
あなたは、画面の表示を見ながら、心中でつぶやいた。掲示板上の怨みつらみのやりとりも、あなたの心持ちを暗くさせていた。
(もう、やめよっかな、これも‥‥。どうせ、ぼっちだし‥‥)
そう。ひとり。いわゆる「ぼっち」。あなたは、下位「チーム」とはいっても、単独プレイヤーだった。
(あのゲームと同じか‥‥)
あなたの内に、以前にやめたRPGの記憶が、再び甦ってきた。世界観は凄く好きだったのに、結局やめざるを得ない状況に追い込まれた思い出が、再び。
ただ、前に悩んだときと違い、いわゆる養分にされることだけではなく、自分の、
(継続性が無いよなー、俺‥‥)
という部分にも、
(俺も、浅いんだ、心構えが。――授業で習った『浅慮』ってやつか‥‥)
そう思い至ることで、自分が精神的に成長できたようにも思えた。そしてまた、煮え切らない思いを抱いたままゲームをプレイしている自分の現状にも、思いを馳せた。
(真剣にプレイしている人は、たくさんいる――)
いやな奴に思えた上位陣プレイヤーにだって、
(俺に見えないところで、努力していたんだろう‥‥)
と。
そう考えることで、これもまた、ひとつ大人になれた気がしたあなただった。
そのとき――。何者かが、ずんずん近づいてくる気配を、あなたは背中に感じた。
(白香だ――)
振り向かずとも、あなたはわかった。桃香はもっと、猫のように音を立てずに歩く。この蒲生三姉妹宅で過ごした日々で、あなたはそれくらいのことは鋭敏に聞き分けられるようになっていた。
(これが、何かの役に立てばいいんだが‥‥。ゲームなら、意味のない能力の付加、だな‥‥)
ぼやくあなたの背後で、ぴたり、と気配が止まった。
(なんだ‥‥?)
あなたが訝しんでいると――。
むにゅっ。
右ひじのあたりに、何かやわらかいモノが押しつけられる感覚を、あなたは覚えたのだった。