紅香語り(9)-1
そしてまた、およそ三十分経って‥‥。
ヴッヴッヴッヴッ、ヴァーン‥‥!
そんな、変な低い音がして、家中が真っ暗になり、
「はーい、乳ペットちゃあ〜ん♡ 桃香さまのお帰りだよー」
と威勢よく玄関のドアを開けて入ってきた桃香は、その場にへなへなと崩れ落ちました。ブレーカーが落ちるのはあらかじめ聞いていたので、驚きはしませんでした。が、やっぱり桃香の身は案じられましたし、
(お姉ちゃんも、こうして堕とされたんだ‥‥)
と、自分がいない間の難事に、わたしは思いを馳せてもいました。
白香お姉ちゃんは、桃香が、へな、となるかならないかのうちに、幸也くんが点けた懐中電灯の光のなかを、リビングのドアを開けて走ってゆきました。懐中電灯はわたしも持たされていて、装置の音ですぐに点灯するよう、あらかじめ言われていました。たとえ明るいままでも、と。
わたしが慌ててそうすると、白香お姉ちゃんはもう、桃香の体を横たえるところでした。そしてすぐに、流れるような動作でブレーカーを復旧させました。パッと、家中が明るくなりました。さすが、お姉ちゃんでした。そしてまた、いつかの停電のときのことも思いだされました。あのとき、お姉ちゃんが最初に玄関に向かったのは、ブレーカーの確認だったのだと、わたしはいまになって気がついたのです。あらためて、白香お姉ちゃんの機転と状況判断力を知った思いでした。女子校生でこんな人は、なかなかいないでしょう。ちょっとくらいおっぱい方面で暴走したからといって、それがなんだというのでしょう。わたしたち妹には、絶対に必要な人なのです。その暴走を――。
(抑えるのが、わたしの役目‥‥)
幸也くんに手伝わせて、桃香をあのコの部屋に運び込みました。元は白香お姉ちゃんの、あの部屋です。そして、桃香を整えておいたベッドに横たえました。勝手を知っている部屋で、お姉ちゃんはイキイキして見えました。目当てはそのお姉ちゃんとはいえ、裸の桃香を運ぶ際、幸也くんは眼鏡の目を白黒させていました。お姉ちゃんは桃香を先に脱がせていたのですが、それは、桃香を抵抗しにくくさせると同時に、これが目的だったのかもしれません。とはいえ、彼は基本的に桃香には興味がないようでした。
そしてお姉ちゃんは、これもてきぱきと、ベッド上の桃香を、いままで自分がされていたX字型に固定しました。さすがお姉ちゃん‥‥と言うべきなのでしょうか。よく、わかっています。これをされると、自分の――特におっぱいや局所の――無防備さがひしひしと実感できて、言うことを聞くしかない、という気持ちになるのです‥‥。わたしたち姉妹の脂を吸ってきた麻縄は、てらてらと、黒く妖しく光っていました。そして、その桃香の林檎のような可憐な乳房は、ふるふると震えていました。
そのふるふる