紅香語り(8)-2
「でも――」
わたしは、言いよどみました。
「でも‥‥?」
お姉ちゃんは怪訝そうに、わたしを見ました。そのまなざしに導き出されるように、胸のうちの疑問が素直に口をついて出ました。
「男の人って‥‥」
「人って――?」
「その‥‥こういうふうにされて、喜ぶのかな‥‥」
わたしだって、思い描いていました。
(海田くんにこれをしたら‥‥)
と。考えたというより、シミュレーションしていたのかもしれません。
(海田くんは、優しくわたしを受け止めてくれて――)
想像は、進んでゆきました。
(でも、我慢しきれなくなって、わたしのおっぱいを下からギュッ!と鷲づかみにしたり‥‥)
(わたしの股間に手を伸ばして、ア、アソコを弄ってくれたり‥‥。――ふっ、ふ、ふうううン‥!)
妄想は、とめどもなさそうな勢いでした。思うだけで、わたしは濡れてしまいそうでした。
いえ、実際に濡れてしまっていたかもしれません。わたしは、お姉ちゃんに体を合わせながら、頭のなかでは海田くんとセックスしていたのかも、しれません‥‥。
(それから、わたしを抱きしめて、ぐいっといやらし棒を挿入してくれたりするのかしら――)
等とおろおろ戸惑うわたしに、白香お姉ちゃんは、
「もちろん、喜ぶわよ‥‥」
とアドバイスしてくれ、それから何故だか、にんまりと笑ったのでした。
そして、わたしは心を決め、お姉ちゃんの拘束を解いたのでした。
「お姉ちゃん、桃香をあまりうらまないでやって」
わたしは言いました。
「お姉ちゃんのおっぱいがあんまりおっきくてきれいだから、あの子きっと、魔がさしたのよ」
「ふふ‥‥。そうかもね――」
それからわたしは、幸也くんのスマートフォンに、電話を入れたのでした。
「桃香くんは抜け――あ、いや、単純――‥‥。あー、その‥‥」
幸也くんは、ベッドに拘束されているはずの白香お姉ちゃんの姿を見て、眼鏡の目を丸くしていました。わたしと白香お姉ちゃんは、そんな彼に、リビングで事情を説明したのでした。お姉ちゃんは、素肌に白い綿シャツを着ていました。監視カメラは回ったままです。もう、後戻りはできませんでした。桃香の気を変えさせるしか、道はない状況でした。
「もし必要なら、あのコにサービス奮発するべきかな。いい方法があるんだけど‥‥」
あのコ、は幸也くんのことです。先の電話後、お姉ちゃんはそう言って腕を組み、なにやら考え込んでいたのですが、その必要はありませんでした。彼、幸也くんも、桃香のやり方に疑問を覚えていたようで、わたしが話しはじめると、いくらもしないうちに、白香お姉ちゃんの調教を中止することに、納得してくれたのです。わたしは、お姉ちゃんが言った「いい方法」というのが、気にはなったのですが(だって、きっと、エッチなことに違いないのですから)当面は目の前の課題に集中して、忘れることに努めました。