紅香語り(6)-4
わたしは、白香お姉ちゃんと桃香を、愛しています。そのわたしには、夢があります。
いまのような、お互いのカラダを調教しあうような関係ではなく、春の木漏れ日の射すわが家のこのリビングで、ソファで、妹・桃香が白香お姉ちゃんに膝枕をしてもらっていて、お姉ちゃんは、その桃香の頭を優しく撫でている‥‥そんな光景を、夢に描いているのです。
わたしはきっと、その横で、『SCARLET』のコーヒーを淹れたりしているのです。白香お姉ちゃんは、目指している映画や漫画の話――解説を入れた――をしていて、わたしたち妹は、それに感心しながら聞き入っているのです。桃香はきっと、
「えー、難しくてわかんないよー」
などと膝の上で言いながら。でも実は、感心して聞いているのです‥‥。
それは、わたしが幼い頃に思い描いていた夢の延長でもありました。小さい桃香に絵本を読み聞かせたりしていた頃――わたしも、白香お姉ちゃんに膝枕をしてもらって甘えていた、懐かしいあの頃の――‥‥。
でも、現状では、それは遠い夢にすぎません。あまりにも遠すぎます。遠すぎて、悲しすぎます。
いえ、わたしたち姉妹――蒲生三姉妹だけの問題では、ありません。
(海田くん‥‥)
以前、わたしの集中期間終了後、わたしは完全に自由の身ではない、としました。が、自由の身ではないのは、わたしだけではないのです。彼、海田くんも、同様なのです。白香お姉ちゃんによって、桃香の調教につきあわされる彼の姿を見て、わたしは、そのことに気づかされたのでした。
現在の、白香お姉ちゃん調教も、そうです。いまのところは、桃香は海田くんを巻き込んではいませんが、いずれ、そうするように思います。秘密を知りながら口外する心配のない、貴重な男の人として。
(‥‥‥‥)
そして、男の人といえば、あの片桐さん、そして、幼い幸也くんも、そうです。あの人たちも、巻き込まれています。きっと、内心では、迷惑していることでしょう。
わたしは、どうするべきなのでしょう。
――おや、携帯の着信が、鳴っているではありませんか‥‥。