紅香語り(3)-1
日は経ち、土曜日になりました。
鬱陶しい梅雨の季節は、いましばらく続きそうでした。得意気な桃香によると、今日もまた、幸也くんがここに来るということでした。お姉ちゃんの手法に学び、彼を巻き込んでゆく気のようです。
そうです。桃香は計画が成功し、すっかり得意――有頂天になっていました。たしかに姉のわたしから見ても、鮮やかな手際でした。桃香にこんなことができるとは、思ってもみませんでした。
(でも、わたしには――)
桃香は自分の頼み方が上手かったので片桐さんと幸也くんを味方にできたと公言しているのですが、少なくとも片桐さんは、あの導入装置を使ってみたいという気持ちが、先にあったのではないでしょうか。桃香の申し出はタイミングがよく、いわゆる渡りに船で協力したのではないでしょうか‥‥。わたしには、そういうふうに見えるのです。
桃香は、その点に全然気がついていないようなのですが‥‥。
と、ブザーが鳴りました。幸也くんの登場です。
ボディガードに付き添われてやって来た幸也くんですが、わが家へはひとりで入りました。ガードの人たちは、
「坊ちゃん、われわれの仕事ですから‥‥」
とわが家へも同行したがりましたが、彼は断り、駐車場で待つように指示していました。
「勤怠報告書には、僕からの命令でしかたなくそうしたと書いておいて。大丈夫。僕からもちゃんと言っておくよ」
大人の人に毅然とそう言う彼を、白香お姉ちゃんは頼もしそうに見つめていました。もっとも白香お姉ちゃんは、乳ペットとして、その彼におっぱいを嬲られる役なのですが――ボディガードさんたちが去ると、お姉ちゃんはすぐに装置で懸架されました。始めるにあたって、高椅子上から桃香は言いました。
「くふふ‥‥。――白香お姉ちゃん」
白香お姉ちゃんは、え、というように、顔をあげました。ほつれた髪が額からかかり、とても艶かしい顔を。
「幸也くんね、毎日、白香お姉ちゃんのオッパイで妄想してたんだって。かわいそうー」
「そ、そんなことないよ!」
桃香の意地悪な言葉に、少年らしく反駁する幸也くん。その彼に桃香は、重ねて言いました。
「無理しなくていいよ、幸也。だって、こおーーん‥‥なに、大きくていやらしいオッパイしてたら、ねえ?」
「‥‥――」
「遠慮しないで、思いきり白香お姉ちゃんのオッパイに齧りついちゃっていいのよ♡」