翌週になって-1
10.翌週になって
お互いに今度会うのは来週末と確認しあった2人であったが、カロリーネを帰した後、昨晩の情事を忘れられず何をやっても集中できない博康だった。
そしてカロリーネの方も同じように、初めて経験した日本人の男との性経験のことが忘れられず、落ち着けない土曜日を過ごしていた。
日曜日になって、博康の携帯にカロリーネからのメールが届いた。
「先日はいろいろと楽しい思い出をありがとう。1週間会わないと約束したけど、あなたのことがどうしても忘れられないの。すぐにまた会いたいけれど、あなたの方は毎日忙しいんでしょ?」との質問を受け、博康はすぐに返信メールを出す。
「そうだね、君はとても魅力的だし、君と頻繁に会っていたら自分の勉強のことなんか忘れて狂ってしまいそうだよ。何とか今度の週末までは会うのを控えよう」
「私のことをそんなふうに言ってくれてありがとう。分かったわ、それじゃ来週末まで会うのはお預けにするけど、私のことを忘れないでね」と強調する彼女だった。
そんな不満足な毎日を過ごした2人だった。
数日後、木曜日の夜になってカロリーネからメールが届く。
「先週は皆と一緒に町に出て、レストランやディスコでだいぶお金を使ってしまったの。それで明日あなたと会うのに直接あなたのアパートへ行ってもいいかしら?
それだったら2人でもっとゆっくり過ごせるし」
博康はすぐに返信メールを出す。「そうだね、僕も町に出るとお金がかかり過ぎてしまうと心配していたんだ。だったら僕のアパートで一緒に夕食をとろう。おいしいワインを用意しておくよ」
すぐにカロリーナから、今度は携帯に電話がかかってきた。
「それなら私が腕によりをかけて、おいしいイタリア料理でもつくるわ。こうみえても料理には少し自身あるの。あなたの大学の食堂でもアルバイトしていたし、味にはけっこううるさいのよ。ナポリ風味のパスタでも作るわ」と興奮して言うカロリーネ。
すぐに博康も電話で応対する、
「そうだったね。君が大学のカフェテリアでアルバイトしていたこと、すっかり忘れてたよ。よしそれだったら、ワインとパンは用意しておくよ。それとデザートにケーキでも買っておくよ」と博康は答えた。
金曜日になって、約束どおり夕方5時頃にカロリーネが博康のアパートにやってきた。
驚いた事に、かなり厚めのお化粧までしている。化粧をあまりしないカロリーネの素顔が好きな博康だが、「どんな美人でも、自分をもっとより魅力的にアピールしたいのだろうな!」と思った。
彼女が部屋に入ってすぐ、2人は立ったまま、再び長く濃厚なキスをする。
やがてカロリーネは、博康の狭いキッチンで料理をし始める。さすが博康の学食でアルバイトをしていただけに、彼女の料理の手際は見事だった。
オーブンの無いキッチンでも、鍋とフライパンを使って絶妙に料理を仕上げて行く。
30分ほどでカロリーネのパスタが完成し、2人は小さなテーブルについて食事を開始。博康はスーパーで買っておいたチリ産赤ワインを開け、2人でスコール(乾杯)。
野菜サラダとフランスパンを添えて楽しい食事が始まった。