【花よりも花の如く】-13
あたし、このまま倒れそう。このまま快楽の中で崩れ落ちちゃいそう。
「俺に掴まれ」
気が惚けてしまって、壁に背を預けたままで滑り落ちそうになったあたしに、先輩がそう言った。
慌てて先輩の脇から手を入れて、肩の方へ腕を回し、ぴったりと全てが密着するようにしがみつく。
も、もうダメ、もう、あたし、イっちゃう……。
「先輩、……あたし、あたしもう駄目です……あっ!あっ、ああっ!!」
突き上げられる度に、抑えようもない悲鳴があたしの口から漏れる。その声に煽られ、先輩の興奮も更に高まっていく。
「俺もだ」
先輩が喘ぐように微かに呟いた。
「俺、凄い興奮してる。……分かるか、愛花?」
先輩の手があたしの手を取った。あたしの中を激しく蹂躙する自分のモノに触れさせる。
そんなの全然分かんない。
けど、先輩の熱く滾る長いモノが、あたしの中を激しく出入りしているのは分かる。熱く滾る先輩のモノが、あたしの中を狂ったように何度も激しく……。
指先に触れる先輩の硬くて太い付け根を、きゅっと握りしめてみる。
凄い、ドクドクいってる。これがあたしの中で、あたしに刺激を与えてくれているモノ。あたしの中を、奥底まで突き上げているモノ。
「ああっ、先輩!……はい、分かります。凄い、先輩……ああっ……」
付け根を握られた先輩の動きは、もっと更に激しくなっていって、
「愛花」
先輩があたしの片足を持ち上げたまま、あたしをぎゅっと抱きしめた。
「先輩」
しがみついた先輩の背中に回した手に力を込める。
もう駄目。もうこれ以上されたら、おかしくなっちゃう。あたし、あたし、もう……。
「あっ、あっ!先輩!!も、駄目、もう駄目です!あっ!!」
思わず感極まった声を上げた瞬間、先輩があたしの中から抜け出した。
途端――
ドロリとした白いモノが、お腹の上に飛び散ったのが分かった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
凄い。
先輩の手が緩んだ途端、あたしはへなへなと床に崩れ落ちてしまった。
凄い、もう。立っていられないくらい、脚腰に力が入らない。
鏡にもたれて荒く息を吐くあたしの髪を、しゃがみこんだ先輩が手を伸ばして、くしゃくしゃっと撫でた。
野良にゃんこの頭を撫でてやるみたいな感じで。
先輩も荒く息を吐いている。見上げた先輩の顔がぼやけている。あたし、泣いてるの?よく分からな
いけど、先輩はあたしを見て、ぎゅっと抱き締めてくれた。
先輩……。
あたし、……あたし、こんなことしたの、お兄ちゃんにバレちゃうかしら?お兄ちゃん、分かるかしら、あたしが先輩に抱かれたってこと。
もし分かったら、お兄ちゃん、何て言うだろう。あたしのこと、もう抱かなくなるのかしら?
やっと呼吸が落ち着いてきて、ふと顔を上げると、壁に掛かった時計が見えた。
六時過ぎてる。
お兄ちゃんが帰ってくる時間じゃない?!
一瞬、こんなことしてる場合じゃないって、早く帰らなきゃって思った自分に、ビックリした。
だって、あたしが好きなのはお兄ちゃんじゃなくて、先輩なのに。あたし、先輩のことが好きなのに。
それなのに、先輩に抱かれてるのに、あたし、お兄ちゃんのことを思ってる?
あたし達、兄妹なのに。お兄ちゃんはあたしのことを弄ぶだけなのに。お兄ちゃんにとってあたしなんか、弄ぶ為の玩具でしかないと思うのに。
それでも、あたしは良いの?
それとも、……お兄ちゃんはあたしのことを違うのかしら?
たまにふと見せるお兄ちゃんの顔を思い出す。
あたしのことを何とも言えないような目で見てる、あの顔。愛おしい者を見るような、弄び辱められるあたしの姿に、自分でヤってるくせに、後悔を感じてるようなあの目。
ほんの一瞬だけど、優しい言葉を掛けてくれる時に見せる、お兄ちゃんのあの目は何?
お兄ちゃん、あたしのことを本当はどう思ってるのかしら?
あたし達、……兄妹なのに。
「ゴメンナサイ、先輩。あたし、もう帰らなきゃ」
お兄ちゃんに抱かれに。
「そうか。本当は、もっと続きをしたいとこだけどな……」
先輩は何か言って、あたしを抱き竦めてキスをした。先輩の口、少し煙草臭い口。あたしの大好きな先輩の口。
「愛花」
唇が離れた時、先輩がそっと囁いた。暖かい息がかかる。少しだけ煙草臭い息。
「今度、また抱かせろよ」
言われた途端、きゅっと胸が締め付けられた。