策略の赤い縄-2
「思い出すねえ、玲奈くん。もう十五年も前になるのか。初めての時の君も、嫌がりながらも拒まずに、僕に唇を与えてくれたねえ」
もう一度唇を合わせ、舌で強引にこじ開けると、加際は玲奈の口の中を舐め回した。そして舌を絡め合い、二人の唾液を混ぜ合わせた。
「んは……」
唇が離れると、そこに唾液の橋が架かり、垂れ落ちていった。
「愛してるよ、玲奈くん」
「先生……」
「それじゃあ美味しくいただこうじゃないか。江島くん、たのむ」
「はい、加際さん」
玲奈の両手が赤い縄で縛られた。それは天井に据え付けられた滑車に繋がっている。
「え? 何を……」
玲奈が動揺の声を漏らした。
ウィーン、という軽いモーター音とともに縄は巻き取られていき、玲奈は吊り下げられる格好になった。なんとかつま先で立っている状態で、グラグラ揺れている。
「あはははははは! いい格好ね、玲奈」
突如、薄暗い地下室に甲高い笑い声が響いた。
「瞳美ちゃん? なんなの、これは」
「あなたはね、縄で縛られ吊り上げられて、見えないし動けない状態で、ボロッカスに痛めつけられるのよ」
玲奈の顔が恐怖に歪んだ。
「そんな! 縛られるとか吊されるだなんて聞いてない」
瞳美は、はあっ、と息を吐き出した。
「幸弘さんの心を取り戻すために、自分が猛烈に犯される所を見せるんだ、って言ったじゃない。そのために協力してくれ、って」
「ええ。だから目隠しで……」
「甘い。甘すぎる。その程度でこの鈍い男の目を覚ませると、本気で思ってるの?」
「だからって、縛るなんてやり過ぎよ。やめて!」
「ふん、やめるわけないだろ」
江島だ。
「手始めに、こうしてやる」
「くっ……」
乳房を乱暴に掴まれた玲奈が、苦痛の声を上げた。
「痛、痛いじゃない! やめて下さい」
両腕を縛られ、吊されているので、逃げることが出来ない。
「あははははは、今日も楽しませてやるよ、奥さん」
江島は玲奈の胸をグチャグチャに揉みしだき、乳首の先端に爪を立てた。
「あっ、ああっ、うぅ……」
苦悶に眉根を寄せる玲奈。しかしその表情には、苦痛とは違う色が浮かび始めていた。
「お前はこんな風に乱暴に犯されたいんだ。そして、それを幸弘に見られたいんだよ」
言葉を返せない玲奈の胸をガシっと掴み、鈍く銀色に光る何かを近づける江島。
「だから、こういうものをプレゼントしてやる」
バチン、と乳首を挟んだそれは強力なバネを持った、大きなクリップだった。
「ぐふぅ……」
玲奈が仰け反った。
「反対側にも付けてやる」
「くはぁ……」
身を捩る玲奈。乳首の先端には朱が差し、今にも何かが出そうな程に腫れあがっている。
「そしてだな、それ、それそれ……」
江島がクリップで挟まれた玲奈の乳房を軽く叩き始めた。
「あっ、あ、あ、ああっ、痛い、痛いぃ……」
「そら、そらそら、そら」
「あはぁあ、やめてぇ……」
そう言いながら、玲奈の口元は少し笑ったように緩んでいる。
「おい、幸弘。お前の奥さんは俺にこんな非道いことをされて悦んじまってるぞ。ほら、ちゃんと見てるか?」
江島に叩かれている乳房が、赤味を帯び始めた。
「ああ、み、見てるさ」
幸弘はゴクリと唾を飲み込んだ。
「よし、それじゃあ、こんな風にもしてやる」
ウィーン、とモーター音が鳴り、玲奈は更に吊り上げられ、両足が浮き上がって宙を泳いだ。その両足首にも赤い縄がかけられ、吊り上げられていった。横から見ると、玲奈の体はU字型にぶら下がっている。
「嫌、嫌よ、放して!」
玲奈は激しく身を捩ったが、どうにか出来るものではない。むなしく宙で揺れるばかりだ。
「さらに」
江島が壁のスイッチを操作すると、玲奈の足を吊っている滑車が左右に開き始めた。
「嫌ぁっ!」
これ以上は股が裂ける、というところまで、玲奈の両足は広げられた。今や彼女は、その場に誰が居るのかすらはっきりとは分からない、誰に見られているのかも分からない、そんな状況で、何一つ遮るものもなく股間を剥き出しに晒されてしまったのだ。
薄く翳った小高い丘。その中央は縦に割れており、隙間から唇のような物がはみ出している。内側には桜色の柔肉が見えていて、そこは、少し白濁した粘り気の強い液体で満たされていた。天井のスポットライトの光をヌラヌラと反射しているその粘液は、今にも溢れ出しそうだ。
「見ろ、幸弘。しっかり見ろ。お前の奥さんのここはこんなことになってるぞ。夫の目の前で胸を虐められ、縄で吊されているというのに、こんなにも欲情してやがるんだ」
「見ているさ、もちろん見ているさ」
幸弘の声は少し震えていた。
「さあどうする?」
「どう、って?」
「お前の奥さんのここに何をして欲しいかって訊いてるんだ」
江島は玲奈の花唇を指先で大きく開き、幸弘に見せつけた。大きく息を飲んだ幸弘が、掠れた声で答えた。
「ああ、何でも。何でもお前のしたいようにしてくれ。僕の妻のそこを、グチャグチャにしてくれ!」
「幸弘さん……」
玲奈の声は艶を帯びていた。
「いいのか? 本当にヤるぞ」
「いいとも。ヤってくれ、早く!」
「ようし、それじゃあ……」
「待って」
瞳美が江島を止めた。
「なんだよ、瞳美」
瞳美は暗い笑みを浮かべている。
「私にもちょっと遊ばせてよ」
「ああ、そういうことか。いいとも」
瞳美は、玲奈の尻の中央に咲いた野菊の花びらのようなすぼまりの淵に両手の親指を当てがうと、グィっと左右に広げた。