奪われた恋人-2
彼とて家が裕福でないのは同じだった。そして、玲奈と同様、ピアニストへの強い憧れと意志を持っている。ここで玲奈を助けに入り、教授の機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。なんとも情けない話だが、それが彼の現実だった。
とりあえず救出して後のことは改めて考える、というやり方に思い至るには、彼は若すぎた。その時の彼にとって、師匠の加際教授に逆らうということは、すなわちピアノを諦めることを意味していた。
教授の手が、玲奈の胸元に迫った。
玲奈は泣きそうな表情に顔を歪めている。
ブラウスの第一ボタンが、慣れた手つきで外された。目を閉じた玲奈の肩は大きく上下に揺れている。
そして第二ボタンに指が掛かり、あっけなくそれは外された。
こぼれ落ちそうな程にハリのある二つの白い膨らみと、それらに挟まれた深い谷間が、粘り着く様な目をした教授の前に晒された。それは、恋人である幸弘でさえ見たことのなかったものである。
さらには第三、第四と次々にボタンは外され、ついに玲奈のブラウスは完全に前をはだけさせられてしまった。
淡い水色のブラに支えられて揺れている、白い乳房。それを舐めるように見つめる教授。
「服の上からの見た目よりずいぶん大きいんだね」
玲奈は無言で俯き、鼻をすすり始めている。
「さあ、その窮屈な布切れから解放してやろうじゃないか」
玲奈の背中へと回された手がホックを外すと、ブラがその中身に押し上げられてフワリと浮いた。彼はそれを両手で掴み、無造作に捲り上げた。
「ひっ……」
ボロン、と大きな白い乳房が零れ出て弾んだ。透明感のある肌に、青い静脈がうっすらと浮かんでいるのが見える。
緊張のためか恐怖によるものか、その先端はギュッと凝縮する様にシワが寄り、硬く尖っている。
「おや、乳首が勃ってるね。もしかして、早く触って欲しいのかな?」
「そ、そんなわけ……」
ピアニストらしい細長い指が、豊満な白い膨らみの、しっとりと柔らかな若い肌の上を、繊細に這い回り始めた。
「うっ、く……」
生まれて初めての感触に、玲奈は思わず声を漏らした。
「ほう、処女だと言うわりには、しっかり感じてるじゃないか」
「ちが、違います……」
玲奈は否定したが、彼女の意に反して小さな桜色の乳首はさらに硬度を増しつつあり、その周辺はほんのりと赤味が差している。老練な教授の手技にかかれば、二十歳にも満たない小娘の情欲を掻き立てることなど造作もないのだ。
「ふふ、可愛いね」
教授は乳房を愛撫する手の動きをとめ、玲奈の胸に顔を近づけて、可憐な乳首を唇にそっと含んで、優しく吸った。
「ん……」
玲奈の顔が、せつなげに歪む。
「よく熟れた木苺の様な感触だな。柔らかいのに十分な弾力があり、軽い酸味がする。美味だねえ」
それがもし乱暴に行われていたならば、拒絶へのエネルギーに転換されただろう。しかし、優しく乳首を吸われたことで、むしろそれを求めるような疼きが呼び覚まされてしまったのかもしれない。彼女の瞳の奥に、鈍い光が灯り始めている。
教授のドロリと湿った赤い舌が伸び、乳首に絡みついた。
「あ……」
僅かに胸を引いたが、それ以上は避けようとしない玲奈。瞼が半分閉じかかっている。
吸ったり舐めたりを何度も繰り返し、乳首を自分の唾液で濡らしながら、教授は再び指で乳房を愛撫し始めた。
「ん、んあ……」
たまらず甘い声を漏らす玲奈。
教授の唇が、今度は玲奈の顔に迫る。玲奈は避けない。目を閉じた。ほんの僅かに開かれた唇で、それを受け止めた。
「んふ……」
拒否を示さない玲奈の様子を見た幸弘の腹の底に、重い塊がズンと落ちた。今、彼の目の前で、恋人である玲奈が脂ぎった中年男に唇を奪われてしまったのだ。いや、このままでは奪われるのは唇だけでは済まないだろう。それでも彼は動かない。いや、動けない。
二人の唇が離れ、唾液が細く長い糸を引いた。
ほんのりと頬を染めた玲奈が、教授を見つめている。
教授の手によって優しくブラウスが脱がされた。そして、肩紐を外されたブラが床に落ちた。
分厚い唇を、玲奈の顔に、首筋にと這い回らせながら、教授は細い指先で彼女の左の乳首をつまんだ。
「あ……」
玲奈が切ない声を漏らした。
コリコリに硬くなった乳首が、指先でこねられ、転がされ、あるいは軽く引っ張られて、爪を立てられた。
「ん、んあ……」
初めて男から与えられる女の悦びに、玲奈は身をよじって耐えている。
教授が顔を近づけると、玲奈は目を閉じ、自分から唇を差し出した。しかし、唇同士が触れあった瞬間、彼女は横を向いて拒否を示した。まだ恥辱と悦楽の狭間で揺れ動いているのだ。
「どうしたんだね?」
そう言いながら、教授は手のひら全体で包み込む様に玲奈の胸の膨らみを揉み上げた。指の間から、桜色の乳首が顔を覗かせている。その先端には朱が差し、今にも何かが吹き出しそうなほどに腫れぼったく膨らんでいる。
再び教授が顔を近づけると、玲奈はもう逆らわなかった。唇が重ね合わされて、少しだけ開いた玲奈の口に教授のドロリと濡れた太い舌が差し込まれた。中が舐め回され、舌が絡まり合った。
何故だ玲奈、と幸弘は叫び出しそうになった。何故受け入れてしまうのだ、と。若すぎる彼は知らないのだ、情欲は時に理性を超えるということを。
チェック柄のプリーツスカートの上から教授の手が下腹部に触れると、玲奈は太ももを少し寄せて腰を引いた。
スカートが、ゆっくりゆっくりと捲り上げられていく。やがて、ブラとお揃いの淡い水色のパンティが顔を出した。