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「なにもせずに抱きしめて寝かせてくれる?」
「・・・・俺に何、求めてんの?」
「う〜ん。安らぎ?」
「んなもん、持ってねーよ」
阿部さんはぶつぶつ文句を言いながら
大きなベッドに2人で入って、私を腕の中に丸めこむように抱きしめた。
「早く寝ろ」
色々な事に疲れた1日だった。
お布団の中は気持ちが良くて
寝ろと言われなくてもまぶたが落ちる。
優しく抱きしめられているその両腕を信じてみても良いかな
なんて思い始めている私がいた。
「俺の知らない男のために、もう泣くな」
私に聞こえないように、小さい小さい声で呟いたけど
シンとしている寝室で、その声は、スっと私の耳に入ってきた。
阿部さんが、ずっと抱きしめてくれるなら―――
きっと、もう泣かない。
そう心の中で思ったけど、眠い私は声に出す気力はなくて。
そのまま、スーっと眠りについた。