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オーディン
【ファンタジー その他小説】

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オーディン第四話『大きな木の下で・後編』-1

二人の男女が手をつないで走っている。鋭い目をした男と、大きな目をした女性だった。男が後ろを振り向く。
「フレイヤ、大丈夫か」
「大丈夫…、フレイ、後ろ!!」
男は前を向き直すと同時に、剣を抜き放った。襲いかかってきたアラストールたちは一瞬で生きたえる。
「フレイ…」
「どうした、フレイヤ」
「ねえ、私たち逃げ切れるのかしら…」
「いざとなれば戦うさ、フレイヤは何も心配しなくていい」
「うん…」
二人は山道を走る。そこは大きな岩がいくつも転がっていて、灰色がかった世界だった
「しかし、ここまで来て“グラシャラボラス”がいないとはな…、ルーンでこの地から離れられないようにしてあったのに…」
「フレイ…」
「大丈夫だ、まだ手はある」
二人が険しい山道を登りきると、そこには鉄の胸当てをした巨人たちがいた。
手前にいた巨人が二人に近寄るとこう言った。
「おい!!“アース”の野郎が来たぞ!!…血祭りだあああ!!」
巨人は手に持っていた金棒を力いっぱい振りあげる。フレイはフレイヤを抱き上げると周りを見渡して、そのまま草むらへ飛び込んだ。そして一人で再び巨人たちの前へ現われた。
「どけえ、木偶の坊!!俺の邪魔をするなああああ!!」
グギャアアア、巨人たちが叫びをあげる。フレイは風の如き速さで、急所を外しながら巨人たちを突き刺していた。
「これでここにいるのは全部か…、フレイヤ、もう大丈夫だ、行くよ」
草むらからフレイヤが現われた。フレイに近付く彼女の頬は膨らんでいた。
「私だって戦えるの」
「ごめん、でも今回は許してくれ、さぁ行くよ」
フレイはフレイヤの手を引っ張ると走り出した。うめく巨人たちの間を通って。

ドンッ、フレイが扉を蹴り開き、叫ぶ。
「ウトガルド、ウトガルドはいるか!!」
大理石の床が二人をうつしだす。しばらくして二階から一人の巨人がおりてきた。
「騒がしい、何事だ」
巨人は頭をかきながらゆっくり階段をおりてくる。
「おお、久しぶりだなフレイ、それにフレイヤ、兄妹そろって何のようだ」
巨人は怪しい笑みをうかべ、指をゴキゴキならしながらそう言った。
「今日はお前に頼みがあるのだ、聞いてはくれぬか」

「よかろう…、その前に、お前が傷つけた兵たちに癒しのルーンをかけるのが先だ」
「…わかった、フレイヤ、頼む」
フレイヤは頷くとその場からいなくなった。
「それで頼みとはなんだ、いつもお前たちには世話になっているからな…」
真ん中にある大きな椅子に巨人は座ると、肘をかけてフレイに尋ねた。
「今までの非は詫びよう、この件が落ち着けば、それなりの礼もさせてもらう」
フレイは拳を強く握り、深々と頭を下げた。
「ほお、お前が頭を下げるとはな…、よかろう話してみよ」
「私と妹のフレイヤをかくまってほしい」
フレイの頼み事を聞くと、巨人は目を瞑りしばらく考え込んだ。そして答える。
「よかろう、二人をかくまうのは難しくない、まぁ相手は大体予想がつくがな…」
巨人は立ち上がり、上の階へと戻っていった。


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