ロ-8
一度入ってしまえばその舌は私の口内を占拠して全体を犯すように舐めつくす。
舌をからめ、歯列をなぞり、阿部さんの温かい舌が私の口内をいやらしく這いまわった。
その感覚にしびれて、背筋がゾクッとする。
気が付けば、腰を支えていた手は、ゆっくりと私の下半身を撫でまわし
そこから得られる快感も身体中に広がって行く。
「んっ・・・」
思わず出たそのため息を聞いた阿部さんが嬉しそうにさらに私を引き寄せた。
一体、どれぐらい長い長いキスをしていたんだろう。
やっと離したお互いの顔は同じように上気していて
同じようにトロンとして妖しく唇から舌先が覗いていた。
「気持ち良かった・・・」
こーちゃんに悪いとか
昨日あったばかりの人だとか
そんな事はどーでもよくて
正直な感想がそれだった。
本当に本当に正直な気持ちだった。
嬉しそうに笑った阿部さんは次に言った私の一言に悲しそうな顔をした。
「いつ振りのキスなんだろう・・・」
こーちゃんとのことを思い出して
情けない気持ちに涙が流れた。
一緒に暮らしている男がいるのに。
その男は恋人なのに。
キスさえしない関係は、はたして恋人と言えたのか・・・?
阿部さんは、何も言わずにもう一度私と唇を重ねた―――