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人形たちの話
【教師 官能小説】

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人形使いになることを決めた日。-4


 ドン!と、意識の引き上げは唐突だった。
「げほっ、げほげほ、」
「よかった、気が付いた?」
「あ、え?」
 死んだんじゃ、と思うけど、そう幾許も経っていないらしく、先生と僕は繋がったままだったし天井も先生の車のモノだった。
 ただ先生の微笑は見慣れた、あの張り付けたような微笑に戻っている。
「ごめんね、首を絞めて……泡を吹いたのを見て、とっさに目が覚めたの」
 あと三秒遅かったら死んでいたかもしれない、そう先生は告げた。
 気付けというのが柔道にはあるらしく、胸を圧迫して気を戻した、らしい。
「深町君は、どうなりたい?」
 私を、どうしたい?
「僕は――先生の“生きた”笑顔を」
 そのままの気持ちを、告げた。
「――描きたいです。だから、先生に殺されるわけにはいかない」
 ふっ、っと先生は笑った。あの“生きた”笑みではなかったけど、いつも僕を安心させてくれる、あの笑顔で。
「でも、そばにいたい?」
「はい」
「我が儘ね。でも、ようやく深町君の本音が聞けた――」
 感慨深げに、先生は目を閉じる。そのまま寄りかかってきた。
「深町君は純粋で、きっとその瞳は真実の私を見てるんだと思う」
「…………」
「私といると、危険よ? いつまたさっきみたいな目に遭うか、――殺されるかわからないのよ?」
 暗に訊いている。自分で自分を守るすべはあるのか、と。
「そこは、先生に我慢してもらうしか……」
「酷い子。私にばっかり我慢させる気なのね」
「だって殺人って悪いことですし」
「そうね。でも、どうでもいいわ――あの快感を感じるためなら、私は何度でも繰り返す――」
 薄く笑う。ああ、もう人間を止めることを先生はとっくに決めてるんだ。
 なら僕は、少しでも先生を抑制してコントロールしよう。
 多分、それが出来るのは、僕だけだから。
 
 そして先生が殺す時は、常にそばにいよう。

 そうすれば、先生の“生きた”笑顔を間近に見ることが出来る。
 僕自身の欲望のために、そうしよう。
「先生」
 先生は目を開いて、じっとこちらを見つめる。
「愛してる」
「私もよ――深町君」
 長くは続かないのはわかっていた。
 でもそれでも少しでも長く続けるために、僕たちは目を閉じて、明日からの困難を思う。



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