5月:時差-4
「気持ちは分かるけど。
そんなのあいつは望んでないと思うけど?」
「・・・・」
「デカイ失敗したらどーすんの?経理で失敗なんか大変だろ?」
分かってる。
「異例の転勤なんだろ?年上のお前が支えてやれよ。
お前の体調や仕事の事で心配させるなよ?」
分かってるってば!
「いいか?宮本、男っていうのは・・・」
「分かってるってば!」
思ったより大きな声を出した。
「失敗してないでしょ?
心配ありがとう!
でも、好きな人がそばにいる青木に私の気持ちは分からないと思うよ?
なにが遠距離恋愛してる、よ。同じ部だったじゃん!」
同期の青木と葵は社内で、しかも同じ部での恋愛を隠すために
お互い遠距離恋愛をしているとみんなに嘘をついていた。
「ごめん」
私は泣きそうな顔をしていたンだと思う。
私の顔を見て、青木は一瞬言葉に詰まって謝ってきた。
「俺が口出しする事じゃなかった」
素直に謝ってきた青木に私はなにも言えなくて。
私の方だっていけないって分かってる。
「どうした?何か経費で不明な点でもあるのか?」
そんな私たちに篠塚さんが声をかけて
「大丈夫です」
そう答えるのが精いっぱいだった。
平日も挨拶程度しか話せなくて
向こうに行ったばかりの小川くんは土日も忙しいらしく
もう何週間、きちんと話していないんだろう?