白香語り(3)-1
そして、計画を実行する日がやって来た。片桐さんが呼んでいる、という嘘で桃香を連れ出すのは簡単だった。あのコは最近、あの「研究室」の存在に興味を強くしているようだった。片桐さんの視線に気がついているかはわからなかったが、彼があの「研究室」を率いる立場であるということを、しっかり認識してきたようだった。
わたしは濃いめのスカイブルーのミニスカ姿の桃香を、普通のバス、コミュニティバスと乗り継いで、研究室のあるあのビルへと連れて行った。上は、ちょっと意外かもしれないが、少し古風な感じの白いブラウスだ。これは、わたしが上手いこと言って着せた。こういうのもきっと片桐さんの好みじゃないかと思うのだ――ま、実はわたしの趣味でもあるのだが。
といっても、自分で着ようとは思わない。お人形さんのように可愛らしい女の子に着せたいのだ。わが家では、それは桃香というわけだ。わたしは、自分の内に密やかな歓喜が湧き起こってくるのを止められなかった。
(もうスグ、あのブラウスを剥いて、下着姿を堪能して、それからおっぱいを――うくく‥‥)
――――‥‥。
そ、それはそうと、このコミュニティバスは、いい。後ろの一人用の座席を選べば、並んで座ったときのように会話をする必要が、なくなるから。準備は整えてあるとはいえ、大舞台を前にして獲物と日常会話をストレスなくこなす役者としての才能は、わたしにはない。わたしだって、まだまだ女子校生なのだ。
ビルは十五階建てで、建物自体には誰でも入れるようになっている。が、わたしは、入る前に片桐さんに電話をした。それからエレベーターで四階へ昇り、研究室にカードを使って入った。バイトも貰える、入館カードだ。
「なんだか、怪物のおなかの
以前、紅香はそう形容して、あの場所をいやがっていた。たしかに、あれはそうなのかもしれない。催淫装置の中枢部分である壁際の球形上の塊から、太い金属のパイプがうにょうにょとくねり出ていて、床に、あるいはすぐ後ろの壁に入っている。色とりどりの無数のケーブルが、ぐちゃぐちゃとからみあい、これも床に壁にと入っていっている。普通の女の子には、理解不能な機械かもしれなかった。
その「怪物」の
片桐さんは、自分は芝居は苦手だと言って、篭絡の際はその場に居らず、後から姿を現わす段取りになっていた。彼がそういう芝居が上手いとはわたしも思わず、またスタッフの人たちもそこまで協力してくれなかったので、「装置」への誘導はわたしが行なった。
わたしの妹・蒲生桃香は、これの新しい機能を教えるから、というわたしの言葉を信じ、球形上の中枢部分の前に置かれた椅子に腰をおろした。すぐに装置が作動した。レバーを動かしたりなんかは、しない。スタッフの人のひとりが、PCを簡単に操作するだけだ。桃香は、怪しく思っていないようだった。自分が触手を持つ金属の怪物の口の内部にいることに‥‥。――わたしは、手はずどおり、離れた場所にある壁のキャビネットに向かった。
ヴィ、ヴィ、ヴィー‥‥。